長寿命化は対応年数の確認から-その1
住み替えから永住ヘ ~40年間の居住者意識の変化~
国土交通省の平成30年度マンション総合調査(以下、「総合調査」と言います。)によると、今から約40年前の昭和55年度では、マンション居住者の半数以上が「いずれは住み替える」と回答していましたが、平成30年度では約3分の2の居住者が「永住するつもり」となっています(図1参照) 。
永住志向の高まりを反映して、マンション居住者の高齢化も進んでいます。総合調査によると完成年次が昭和54年以前(=築年数40年以上)のマンションでは、世帯主の年齢が70歳以上の割合が約5割、これに60歳以上を加えると約8割を占めています。
なお、昭和55年~平成元年( =築35年以上)に完成したマンションでも、同様な年齢構成となっています。
長寿命化志向が圧倒的
国土交通省の調査によると、平成30年度までに建替え完了および建替え中のマンションは267件です。これを仮に旧耐震甚準マンションの管理組合数16,886を母数とすると、建替え率は1.58%となります。
また、総合調査では「マンションの老朽化問題についての対策の議論」について聞いていますが、それによると、建替えの方向で検討した管理組合は、わずか1%となっています。ちなみに、修繕・改修の方向で検討した管理組合の割合は、21%でした(図2参照) 。
さらに旧耐震基準のマンションの管理組合に絞って建替え検討率を見ても4.9%と低い率です。
ちなみに、修繕・改修の方向で検討した管理組合の割合は、55.8%でした。これらのデータから、「ほとんどの管理組合ではマンションの老朽化に対して建替えは念頭になく、修繕・改修で対応しようとしている」ということが言えると思います。
そして、このことを端的に言えば、「長寿命化を目指す」ということになろうかと思います。
最低限必要な性能は構造安全性
長寿命化を目指すならば、外壁の補修や屋根防水、給排水管、エレベーターの取替えに加え、居住機能や性能の陳腐化を回復するための設備等の取替え、さらには旧耐震碁準のマンションの場合は、耐霙改修も必要になる場合もあり、改修投資額は大きくなります。マンションの区分所有者が多額の改修投資を決断するに当たっては、その投資が無駄にならないよう、「このマンションは、少なくとも今後何年程度使用可能で、改修をすればさらにどれくらい長寿命化できるか? 」ということを確認しておきたいのではないでしょうか。
まず、「今後どれくらいの期間、構造的に安全に使用可能か? 」については、次の2種類の構造性能を確認する必要があります。
耐震性 (短期の構造・安全性) |
我が国は地震国で、いつ、どこに大地震が発生するか分かりません。そのときマンションに修復不能な損傷が生じると、解体せざるを得ず、長寿命化はできなくなります。したがって、特に旧耐震基準のマンションは、耐震診断により耐震性能を把握する必要があります。 |
耐用年数 (長期の構造・安全性) |
建物の構造耐力は、構造体の長期間の劣化により徐々に低下していきます。鉄筋コンクリート造の場合、その劣化の支配的要因はコンクリートの中性化であると言わ れています。中性化がどの程度進んでいるか等を調査し、耐用年数がどの程度あるかを確認する必要がありま。 |
コンクリートの中性化と構造的劣化
マンションのほとんどは鉄筋コンクリート造です。
鉄筋コンクリートの長期的劣化は、コンクリートの中性化の進行が支配的であり、その構造的劣化のメカニズムは、図3の通りです。
中性化の進行は、個々のコンクリート特有の中性化速度係数(下図グラフのC=Av'tのAの値)によりますので、適切な位置からコンクリートコア等を採取し、中性化試験等により同係数を割り出す必要があります。