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管理費滞納等に対応に関する基礎知識-②

管理費滞納等に対応に関する基礎知識-②

法的手続の種類と選択

滞納管理賀等を同収するための法的手続には、債務名義(裁判所が債務者に滞納管理費等を管埋組合に支払うべきことを証するもの)取得のための手続と、さらに任意に支払いをしない場合の強制執行(滞納者の財産を売却後して、その代金から債務を現実に回収するもの)の手続の2段階の手続があります。

次号で紹介するように、滞納管理賀等は先取特権という特別な効果を有する債権であることから、改めて偵務名義を取得しなくとも、先取特権を行使して強制執行をすることは可能ですが、手続の途中での相手方の任意の支払いや、手続の中で支払い方法の合意(和解)等がなされることも期待しつつ、訴訟等の債務名義を取得する手続を通じて解決を図ることが多いところです。

債務名義を取得する手続およびその特徴等は以下のとおりです。

手続

特徴・手続の概略

①民事手続

裁判所の調停委員が仲介し、当事者がお互いに譲り合って合意点を見出し、実梢に即した紛争解決を図る手続です。

調停が成立すると、合意内容が調停調書に記載され、調停の内容が履行されない場合には調停調書に基づき、強制執行を巾し立てることが可能。

簡易裁判所に申し立てます

②支払督促

簡易裁判所への責権者の申立てにより、形式的な要件を満たしていれば、相手方の言い分を聞いたり証拠調べなどをしないで、裁判所書記官から債務者に対して金銭債務の支払いを督促する手続です。

支払督促の発送から2迎間以内に債務者から異議申立てがあると通常訴訟が開始しますが、異議申立てがなく2週間が経過すると債権者の申出により仮執行宣言を付する手続がなされ、それについても偵務者からの異議がなく2週間が経過すれば仮執行宣言付支払督促が確定し、金銭債
務につき強制執行の申立てが可能になります。

③少額訴訟

60万円以下の金銭債務の支払いを求める訴えについて、原則1回の期日で審理、判決がなされるという節易な手続です。

簡易裁判所に、少額訴訟手続によることを明示して申し立てます。

④通常訴訟

最も強力な紛争解決手段です。

訴えを起こされた相手方は、裁判所からの呼び出しに応じず欠席すると敗訴判決が言い渡されるので、訴えに応じなければなりません。

訴額が140万円以下であれば簡易裁判所、それを超えれば地方裁判所に申し立てます。

管理組合内部での手続

(1)総会決議

標準管理規約では、組合員に管理費等の滞納があった場合には、遅延損害金や、違約金としての弁護士費用や督促等のための費用も合わせて請求できるものとしています(60条2項) 。

そして、この遅延損害金等については、請求しないことについて合理的事情がある場合を除き、請求すべきものと考えられます(コメント60条関係⑥) 。

総会では、いかなる法的手統を取るのか、弁護士等に委任する場合の弁護士等の選任方法等、法的手続に要する賀用(弁護士費用を含む。)等を決議することとなります。

また、通常訴訟や少額訴訟手続では、後述のように、手続の中で裁判所から和解勧告がなされることが多いので、迅速な解決のため和解を受託するか否か等について埋事会に一任する旨の決識を得ておくことも考えられます。

あらかじめ理事会において、専門家の助言等を踏まえてこれらについて検討をし、議案を作成して総会に提出します。

この際、滞納者の情報をどこまで記載するかが問題とされることがありますが、基本的には管理組合という団体内部の問題であり、管理組合の構成員である区分所有者が管理組合(他の区分所有者)に負っている基本的な義務に係わることでもあることから、滞納者の梢報の記載が直ちにその者の名誉やプライバシーの侵沓となるものではないと解されます。

また、法的手続においては、その相手方の特定や、埋事長が当該手続を行うことにつき管理組合内で必要な手続がなされているかを総会議事録等で証明する必要が生じます。

したがって、議案書および総会議事録には、最低限部屋番号を記載し、当該居室を区分所有する組合員に対し法的手続を取ることおよびそれにつき管埋組合内部で必要とされる手続を経ていることを明記しておくことが必要でしょう。

総会では、議案に対しては、法的手続の相手方である滞納者も議決権を行使することができます。

また、例えば、区分所有法58条等の共同利益背反行為に係る専有部分の使用の停止等の訴訟を提起するための総会決議に際しては、請求の相手方となる区分所有者に総会の場で弁明の機会を与えなければならないとされていますが(区分所有法58条3項)、滞納管J叫貨等の請求に係る法的手続に関しては、法令上も、標準管埋規約上も、そのような特別な手続は求められていません。通常の総会決議における手続に従って、決議(普通決議)をすることになります。

(2)理事会決議による対応 ~規約に特段の定めがある場合~

なお、あらかじめ管理規約において、理事長が、未納の管理費等および使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる旨を定めていれば(標雄管理規約60条4項参照)、総会決議を得ることなく、理事会の決議によって、滞納管理費等回収のための法的手続を行うことができます。

この場合の理事会における手続に関しても、滞納者に対する弁明の機会の付与などの特別な手続は必要とされず、通常の議案と同様に決議をすることになります。滞納者に係る情報の理事会議事録等への記載についても、総会の場合と同様に考えることができるでしょう。

民事調停手続の概要と手続選択の視点

(1)民事調停の手続の概要

民事調停は、裁判所の調停委員が仲介し、当事者がお互いに譲り合って合意点を見出し、実情に即した紛争解決を図る手段です。

民事調停の申立ては、債務者の住所地を管轄する箇易裁判所か、当事者が合意により定めた地方・簡易裁判所に対し行います。

標準管埋規約では、マンションの所在地を管轄する地方・簡易裁判所を合意管轄裁判所と定めていますので(規約68条)、これに準じて規約を定めている管理組合の場合は、滞納者が既に転居している場合でも、マンションの所在地を管轄する簡易裁判所に申立てをすることができます。

調停には、区分所有者を代埋して埋事長が出席することが基本となりますが、弁護士に代理人となってもらうことも可能です。

調停が成立すると、調停の場で合意された内容が調停調書に記載され、それが履行されない場合には調停調書に甚づき、強制執行を申し立てることが可能となります。

調停が不成立となれば、あらためて訴訟等で解決を図ります。

(2)手続選択の視点

調停は、当事者間ではなかなか協議が調わなし、場合に、裁判所の調停委員会の仲介により支払い方法等につき合意形成を図るものであり、あくまでも話合い解決の1つです。

したがって、滞納者との間で協議や合意の余地がある場合に取り得る手段であって、滞納者に最初から支払意思がなかったり、所在不明などによって協議の余地等がない場合には、選択肢から除かれます。

支払督促

(1)支払督促手続の概要

支払督促は、管理組合が簡易裁判所に申し立てることにより、裁判所書記官が、滞納者の言い分を聞くことなく、滞納者に対し支払いを督促する制度です。

支払督促の中立ては、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対し行います。

裁判所書記官は、申立書の内容を審査し、形式的な要件を満たしている場合には、支払督促を偵務者宛てに発します。

支払督促の送達を受けてから2週間以内に債務者から異議の申立てがあると、通常訴訟に移行しますが、異議の申立てがなく2週間が経過すると、債務者は仮執行の宣言を申し立てることができます。

この申立てを受けて裁判所書記官は、債務者に対し、「仮執行宣言付支払督促」の送達を行い、これに対し債務者からの異議がなく2週間が経過すれば、支払督促は確定判決と同一の効力を有することとなって、金銭債務につき強制執行をすることができます。

(2)手続選択の視点と留意点

支払督促は、申立書に貼付する印紙代が通常訴訟の半額で済み(安価)、書面審査のため裁判所に出碩する必要もなく証拠も不要で(簡単)、滞納者に仮執行宣言付支払督促が送逹されると強制執行が可能となる(迅速)という利点があります。

しかし、滞納者の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てをするため、滞納者が異議を申し立てるとその裁判所において通常訴訟手続がなされることになり、滞納者が転居して遠隔地に居住している場合には管埋組合側の負担が大きくなります。

また、後述の公示送達はできませんので、滞納者が所在不明の場合には利用することができません。

したがって、滞納者が既に遠隔地に転居してし、て督促異議がなされるnJ能性が高い場合や、滞納者の所在が不明の場合には、別の手段を検討する必要があります。

少額訴訟

(1)少額訴訟の手続の概要

少額訴訟は、訴額(訴訟の目的の価額、つまり、訴訟上晶求する元金の金額を意味し、利息、遅延損害金等の請求部分(これを付帯請求と言います。)は含まれません。)が、60万円以下の金銭の支払いをめぐる紛争に限って利用できる手続です。

ただし、少額訴訟は、同一の申立人が同一の簡易裁判所において利用できるのは、年10回までに限られますし、滞納者の所在が不明の場合は利用することができません(通常訴訟手続に移行します。)。

少額訴訟の提起は、債務者の住所地かマンションの所在地を管轄する簡易裁判所に対し行います。

訴状には、少額訴訟による審理および裁判を求める旨の記載をしなければなりません。

これに対し、被告である滞納者は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができ、この場合には、通常訴訟手続に移行します。

少額訴訟は、原則として1回の審埋で紛争を解決する特別の手続であるため、最初の審埋の期日までに全ての主張と証拠を裁判所に提出する必要があります。

「滞納者が組合員であること」を証するものとして、滞納者が区分所有する居室の建物登記事項証明書を、「滞納者が管理貨等の支払い義務を負っていること」を証するものとして、マンション管理規約および管理黄等の額を定めた総会議事録を、「滞納の事実および滞納額」を証するものとして、滞納管理費等一覧表や管理組合の預金通帳の写し等を証拠として提出します。

また、証人については当日に在廷できるように打合わせをしておく必要があります。

管理組合の請求が認められた少額訴訟判決には、仮執行宣言が付されるので、滞納者が判決に従わない場合には、判決の内容を強制執行により実現することができます。

(2)手続選択の視点

少額訴訟は、上記団の支払督促に比べ、手続が若干煩雑で申立手数料も高くなりますが、滞納者がどこに居住しているかに関係なくマンションの所在地を笠轄する簡易裁所に訴えを提起することができますので、手続に対する管埋組合の負担は少なくなります。

また、少額訴訟では、判決で分割払い等を命じることも可能とされ、また、裁判上の和解により柔軟な解決も図られることから、判決等の債務名義の存在を踏まえつつ、判決等の内容に即した支払いにより、強制執行をすることなく滞納管埋賀等の回収を図ることも期待できます。

通常訴訟

(1)通常訴訟の手続概要

通常訴訟は、最も強力な紛争解決手段です。一般的に民事裁判として認識されているもので、滞納者が所在不明であったり、裁判期日に欠席した場合にも手続を進めることができます。

通常訴訟の提起は、滞納者の住所地か、マンションの住所地を管轄する裁判所に対し行いますが、合意管轄裁判所があらかじめ定められている場合は、その裁判所に提起します。

また、訴額(訴訟上請求する元金の金額を意昧し、利息、遅延損害金等は含まれません。)が140万円までは簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴えることになります。

訴状において、滞納者の管理費等の支払い義務の存在や滞納額を示し、当該金銭の支払い債務があることを主張します。

あわせて、上記主張を裏付ける証拠を提出します。

相手方から答弁書が提出されますので、その内容を確認し、反論があれば、それに対し準備書面を提出して再反論をし、不足している証拠などを提出します。

通常訴訟手続でも、判決に至る前に、裁判官から和解を勧められることが一般的です。

和解案の内容が管理組合にとって不利益ではなく、滞納者がその内容に即して支払いがなされる期待ができる場合には、和解を受諾することも検討します。

和解が成立すれば、和解調書が作成され、その記載は確定判決と同一の効力を有します。

したがって、和解内容に従った1責務の版行がなされないときは、当該和解調書を債務名義として強制執行を申し立てることができます。

一方、和解が成立しないときは、裁判所は、判決をします。

滞納管理賀等の支払いを命じる判決が確定すれば、その半lj決に基づき滞納者の財産に対し強制執行をすることになります。

また、仮執行宣言が付いていれば、滞納者から控訴されて判決がまだ確定していなくても仮執行をすることが可能となります。

(2)手続選択の視点

上記の支払督促や少額訴訟が利用できない場合や、滞納が長期化しているようなときは、通常訴訟を検討することになります。

まず、滞納者が所在不明である場合には、支払督促や少額訴訟はできませんが、通常訴訟であれば手続を進めることが可能です。

この場合、通常の調査方法(住民票等を取り寄せ、その記載地に出かけて現地調査をしたり、取引関係者・近隣住民・親族等に行方を尋ねたりする。)を講じて探索したにもかかわらず、滞納者の所在が判明しなかった旨の「調査報告書」を作成して裁判所に提出し、訴状の公示送達(一定期間裁判所の掲示板に掲示す
ることにより送達の効果を生じさせるもの)を申し立てます。

また、通常訴訟では、滞納者が訴状を受け取りながら、第1回の口頑弁論期日に欠席し、答弁書も出さない場合には、裁判所は、滞納者が管理組合の請求を争わないものと認めて、管理組合の請求どおりの判決をすることができるとされていますので、滞納者が全く手続に応じないような場合にも有効な手段となります。

ただし、通常訴訟の場合は、裁判所に提出する準備書面等の作成、提出すべき書証の選別、和解交渉、証人尋問の準備等が煩雑であり、かつ、多くの時間がかかって管理組合の理事長等の負担が過大になるため、弁護士等に訴訟代理人となってもらうことが一般的です。

この場合、当然に弁護士費用の負担も発生します。

これも違約金と位置付けることにより最終的に滞納者から回収することはできますが、実際にどの程度の額が認められるかは、個別事惜により異なる可能性がありますし、実際に判決に従って支払いがなされるかば滞納者の資産状況によることになります。

したがって、賀用についても事前に十分に検討のうえ、管理規約等に従い適切な手続を経て弁訛士等に依頼等する必要があるでしょう。

 

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