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マンションの構造躯体と耐震性

マンションの構造躯体と耐震性

マンションとは

国士交通省の推計によれば、マンションは令和元年末時点で全国に665万5千戸のストックがあり、日本国民の約1割がマンションに居住しているといいます。

新しいマンションが続々と建築され、そのストックは現在も増え続けているのが現状です。
マンションという言葉は比較的新しく、昭和30年代の後半に、同潤会アパートメントや公団住宅などといった従来の団地や共同住宅と差別化する目的で、デベロッパーが高級感を持たせて販売するために生み出した造語です。本来マンションとは、欧米では戸建ての豪邸を意味しているので、日本では本当の意味とは違って使われているのが実態です。

区分所有法が昭和37年に制定されているので、まさにマンションが多く建設されるようになった時期に合わせて法律も整備されていったということが分かります。

マンションという言葉が法律用語とされるのは、平成13年のマンション管理適正化法まで待つことになりますが、それまでの間に共同住宅といえばマンションのことといっても過言ではないくらいに一般化しました。大きく分けて、木造や軽量鉄骨造の2階建て共同住宅をアパート、鉄筋コンクリート造(以下、「RC造」といいます。)や鉄骨鉄筋コンクリート造(以下、「SRC造」といいます。)で、2階建て以上の比較的大規模な共同住宅がマンションとされています。
RC造もしくはSRC造の建築物は、適切に管理すれば100年でも200年でも維持することが可能です。

マンションの構造躯体と耐震性

よく本当に100年も使えるのですか?という質問を受けるのですが、フランスにある)レ・コルビュジェ設計によるユニテと呼ばれる一連の共同住宅泄界遺産に登録されています。)は、築70年を超えても改修を繰り返し、現在も人気で入居待ちになっています。
また、H本では長崎の端島(通称軍艦島、同じく世界遺産です。)の30号棟という建物が最初の集合住宅といわれていますが、1916年築のため100年を超えており、1974年に人が住まない廃墟となって以降、維持管理されていなくても、潮風の吹き付ける悪環境下で、劣化は進行しているもののまだ建っています。
これらの実例から考えても、住み続け、直し続けていれば70年どころか、最低でも100年というのは十分に現実的な話なのです。
ただし、RC造でできた建物を、100年の単位で維持管理するためにはいくつかの条件があります。

 

それは、①適切な時期の大規模修繕、②適切な時期の設備更新、③ 旧耐震建物であれば耐震改修の実施、④居住者間のコミュニティが良好で理事会運営なども適切であること、の大きく分けて4つです。

マンションの構造と特徴

マンションを長く維持するためには、まず、その構造を正しく認識しておくことが重要です。

マンションは、先述の通り、RC造もしくはSRC造のものがほとんどです。築年の古いものの中には、一部のデベロッパーが分譲した鉄骨造(以下、「S造」といいます。)のマンションも少数ですが存在していますが、ここでの詳細な説明は割愛します。
鉄筋コンクリートの特徴として、圧縮(押される力)に強く引っ張り(伸ばされる力)に弱いコンクリートと、圧縮に弱く引っ張りに強い鉄の2つの異なる性質を組み合わせて、建物に加わる様々な力に対して耐える力のある材料であるといえます。

また、アルカリ成分の強いコンクリートが、水や大気による酸化(サビによる腐食)に弱い鉄を、自身の持つアルカリ成分により、酸化から守るという補完性も持ち合わせています。
SRC造の場合は、RCの中にさらに鉄骨を入れて強度を増した構造体を作るもので、7階建て以上の建物に多く採用されていました。10階建て以上のマンションなどでは、下層階はSRC造で中間階から上をRC造と、鉄骨鼠を削減した経済設計によるマンションも多く見られました。

鉄骨にはフルウエブのH型鋼※1を使用したものの他、組立て材による梯子型やラチス型* 2の鉄骨を使用した建物もあり、それぞれに耐力が異なり、耐震性に影響があるので注意を要します。
H形状H鋼の“-’'部分をウエブといい、この部分に穴などがない状態のものをフルウエブといいます。
L字型の鉄骨を2本ずつ2組を向かい合わせ、間に鉄板を斜めに挟んでトラス構造状に組み立て、H型にした組立材。構造耐力としては、やや弱い傾向にあります。
RC造もしくはSRC造の構造は、形態としてラーメン構造と壁式構造に大別されます。ラーメン構造といっても、食べるラーメンのことではなく、ドイツ語で額縁を意味し、鉄筋コンクリートの柱と梁を一体化するように剛接合させ、強固な枠を形成した建物の構造のことをいい、中高層のマンションに多い構造形式です。柱や梁の中心に鉄骨を組み込んだSRC造の場合、より強度が高いため高層のマンションに多く見られます。横に長く、北側に廊下、南側にバルコニーがあり、住戸が何軒か並び、柱梁で囲まれたコンクリートの壁(上下階で位置が揃っていて、下階から最上階まで連なっているものを耐震壁といいます。)で区切られ、住戸が一列に並んでいる形状は日本では極めて多く、耐震壁付きラーメン構造と呼ばれる構造形式です。この構造形式は、柱と梁で囲まれ、耐震壁で区切られた住戸の中であれば、一部の設備配管などを除いて比較的自由に可変できるという特徴があります。
それに対して壁式構造は、5階建てまでの公団タイプの階段室型共同住宅に多く見られる形式で、柱梁が無い代わりに壁が多く、その壁量と配置によって建物を支えているのでコンクリートの壁量が多くその部分を変更できないため、住戸内のレイアウトは一定の範囲のみの可変となるので自由度は低めといえます。

また、壁式構造は壁が多いことから耐震性が高く、旧耐震でも現行の耐震基準を超える耐力が認められる建物も多く存在します。
これらの構造形式の違いは、建物を長く維持管理する上での基本となりますので、お住まいのマンションがどのような構造形式でできているか、確認しておくと良いでしょう。
なお、現代では高強度コンクリートという特殊なコンクリートが使われるようになり、それを工場で柱や梁に加工して現場に運び込んで組み立てて建築するプレキャスト構造が将及してきており、超高層マンションなどでは高強度コンクリートを使用したプレキャスト鉄筋コンクリート構造が主流になっています。

超高層マンションの場合、ほとんどに制振機構や免震装置が組み込まれており、構造体そのものは地震に対して極めて強くできています。また超高層も含め現代のマンションではスケルトンインフィルはI)という考え方が主流になっているため、住戸内の可変性が高いのも特徴です。

構造形式と耐震性能

構造形式によって最も異なるのが耐震性です。
耐震性能は、建てられた年代によっても大きく異なりますので、最初にそこを確認しておく必要があります。
耐震性能を決める耐震基準とは、建築基準法で定められている建物に要求される強度の基準です。
これまでに何度か見直しされており、最も大きく変更されたのが昭和56年です。

そのため、これ以前の建物を旧耐震碁準建物、これ以降の建物を新耐震甚準建物と大別しています。

さらに、その10年前の昭和46年にも大きな法改正があったので、昭利46年以前の建物を旧々耐震基準建物や第一世代基準建物といい、旧耐裳基準建物とは分けて耐力的にはさらに弱い建物として考えています。
分かりやすい違いとして旧々耐震基準と旧耐震基準の間では、柱の帯筋( フープ)の間隔が10cm以内と改められています(旧々耐震甚準の建物では、フープ間隔が20cmや30cmのものもあります。)。

これは、地震などの外力が建物にかかった際に、上階の荷重を支える下階の柱の主筋が外側に広がろうとするのを帯筋が拘束し、柱を縦方向に座屈させない効果があり、特に後述するピロティ形状の建物において、倒壊の有無を左右することになります。

また震度と建物の倒壊の関係が挙げられます。

旧耐裳基準建物・旧々耐震甚準建物では震度5で倒壊しない建物とされていましたが、新耐震基準建物では震度6でほとんど側壊しない建物であること、と変更されています。
また新耐霊基準では、倒壊だけではなく構造上主要な部分が損傷することを防ぐという観点が加わっています。

これは、大地震では1回揺れたら終わりとは限らず、余震でも大きな地震が複数回発生することが想定されるため、それらを乗り越えるためには、「単に震度6で倒壊しない」だけでは足りないことがお分かりいただけるでしょう。
実際に2016年4月の熊本地震においては震度6を超える地震が7回も発生しており、1度目で耐えた建物も、2度目、3度目で損傷の蓄積から倒壊に至ったという旧耐震建物も存在します。
特に旧々耐震建物基準の鉄筋コンクリート造マンションで1階部分がピロティ構造(心になっていた建物では、阪神淡路大霊災や、熊本地震においてもピロティの柱が圧壊し、倒壊したマンションが数多く報告されています。
ただし、新耐震基準建物だからといって、被害がないということではありません。建築基準法はあくまでも最低限の基準を定めたものであり、構造耐力上主要な部分(主に柱と梁や耐震壁)は損傷を受けないことを目的としていますが、それ以外の壁(建築の世界では「雑壁」と呼びます。)の損傷は許容しています。

実際に東日本大震災においては東京都内で、熊本地震では熊本市内において新耐震の建物で雑壁が剪断破壊を起こし、X字状にヒビが人って外からでも屋内が見えるような損傷を受けた建物も存在します。

写真2熊本地震被害

写真3耐震補強

耐震補強工事の実例

高経年マンションの抱える最大の問題ともいえるのが、耐震改修です。

写真4耐震補強

昭和56年6月以前に確認申請を提出して建築された建物は、現在の建築基準法で規定されるところの耐震性能を有していない建物がほとんどであるため、耐震診断が必須となっています。
耐震診断を実施すると、結果のIs値(lげが基準値を下回り、巨大地震に対して倒壊もしくは崩壊する危険性や可能性が高い、という結果になるマンションも多くみられます。診断結果が枯準以下である場合は、補強設計を実施し耐震補強工事へと進みますが、それぞれのステップごとに多額の費用がかかり、補強量が多い場合は改修工事費用が1回の大規模修繕工事費用の数倍といったケースも見られます。費用だけでなく、補強のV字型の鉄骨ブレースがバルコニーの前に取り付けられるような計画もあり、一部の居住者への負担が多くなることから、対象住戸に補償金などの支払いを検討しないと、住民の合意形成が難しいケースも多くなります。マンションの耐震化には丁寧な説明の積み重ねと、届住者の合意形成が欠かせません。
耐震性能が低い建物で、予算が不足している場合は、段階的な補強を検討しましょう。ピロティ部分だけでも補強することで建物の倒壊の危険は小さくなります。計画的に予算を積み立て、最終的に全体で所定の耐力を持つ建物にしていくことも有効な手段なのですが、段階的補強に助成金を交付している自治体は少なく、これが可能になることで被災する建物が減ることが期待されます。

新築時と法令が変わって、建て替えると現状規模が確保できないマンションの場合、大きな地震で建て替えなくてはいけない損傷を受けてしまうと、住民にとっても住戸面積が減少するだけでなく、建替えの費用負担も多く、合意形成も難しいなどデメリットが多すぎて、極めて困難な道のりになってしまいます。

ですが、耐震改修の場合は、建替えよりもずっと安価で済み、基本的に住みながら行うことができ、現在の建物がそのまま有効に活用できるという大きなメリットがあります。

また各地方自治体にはマンションの耐震化に対する助成金があるところも多いので有効に活用し、大きな地震が起きる前に最善の筋道を立てておくことが望ましいといえるでしょう。
耐震改修工事は晴れて完成を迎えれば、新耐震基準と同等の性能を有するだけでなく、固定資産税の減免措置や、地震保険の減額措掴、住宅ローン減税の対象になるなど、住み続ける人にも次世代の所有者にも有効な資産価値が認められる建物になります。