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マンション管理適正化法一部改正・標準管理規約一部改正

 

マンションの管理の適正化の推進に関する法律の一部改正(法の施行に向けた働き)及びマンション標準管理規約の改正について

 

はじめに

マンションの管理や建替え等については、これまでも管理の適正化や再生の円滑化に向けて法制上の措置をはじめとした様々な施策を講じてきたところでありますが、我が国におけるマンションのストック数は約675万戸(令和2年末時点)にのぼり、1, 500万人超という国民の1割超が居住するだけでなく、全国に広く分布し、中でも1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千菓県)に半数強が集中するなど、都市部等を中心になくてはならない重要な居住形態となっています(図1)。

図1-住宅ストック数

一方で、今後、築40年超のマンション※2は、現在の約103万戸から10年後には約2.2倍の約232万戸、20年後には約3.9倍の約405万戸と、建設後相当の期間が経過したマンション(高経年マンション)が急増することが見込まれています(図2)。

図2-高経化マンション数

また、全国のマンションストックの約3分の1を占める団地型マンションについても、今後、高経年化が更に進展していくことが見込まれています。

このような中、マンションの建替えの実績は263件(令和3年4月時点)に留まっているところです(図3)。

図3-マンションストック数増加

このままマンションストックの高経年化が進んだ場合、マンションの管理については、区分所有者の高齢化や非居住化(賃貸・空き住戸化)の進行に伴って、管理組合の担い手が不足することによって、総会の運営や決議、維持修繕に必要な修繕積立金の確保が困難となり、建物・設備の老朽化が一層進行する等の課題が生じるおそれがあります。

しかしながら、区分所有者の多くは、マンションの建替え等や管理に必要な法律・技術上の専門的知識や経験を必ずしも有しておらず、管理組合による自主的な取組に委ねるだけでは、必ずしも適正な対応が期待できないと考えられます。

また、マンションが適切に維持管理されない場合、戸建て住宅に比べ、その規模ゆえに閲辺の居住環境に与える影聾が大きく、外墜の剥落など看過できないほどの外部不経済を発生させるような状況に至ったマンションストックが形成された場合には、行政代執行による対応など膨大な財政負担等が発生することが懸念されます。

このような問題認識の下、マンションの管理の適正化や再生の円滑化に向けた取組の強化等、ストック活用の時代における新たなマンション政策のあり方を検討し、昨年6月にマンションの管理の適正化に関する法律(平成12年法律第149号。

以下「マンション管理適正化法」という。)の一部改正が行われたところです(図4)。

図4-法改正の概要

マンションの管理の適正化に関する法律の一部改正(法の施行に向けた動き)について

基本方針の制定

改正法では、国においてマンション管理の適正化を促進する観点から、地方公共団体等の役割を明確化し、適正化の推進に関する基本的な事項や目標について、基本方針を定めることとされております。

主な記載内容としては以下となります。

※以下は、令和3年6月14日から7月15日までの期間においてパブリックコメントを実施.した基本方針の案の内容であり、今後変更が生じる可能性があります。

一、マンションの管理の適正化の推進に関する基本的な事項管理組合、国、地方公共団体、マンション管理士、マンション管理業者等の関係者について、それぞれの役割を記載するとともに、相互に連携してマンションの管理適正化の推進に取り組む必要があることを記載。

ニ、マンションの管理の適正化に関する目標の設定に関する事項地方公共団体は、国の目標を参考にしつつ、区域内のマンションの状況を把握し、実情に応じた適切な目標を設定することが望ましいことを記載。

三、管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に関する基本的な指針(マンション管理適正化指針)に関する事項マンションの管理の適正化のために管理組合および区分所有者等が留意すべき事項等を記載するとともに、地方公共団体が助言、指導等を行う場合の判断基準の目安および管理計画の認定基準を記載。

四、マンションがその建設後相当の期間が経過した場合その他の場合において当該マンションの建替えその他の措置に向けたマンションの区分所有者等の合意形成の促進に関する事項建設後相当の期間が経過したマンションにつ
いて、修繕等のほか、要除却認定に係る容積率特例等を活用した建替え等を含め、どのような措羅をとるべきかを区分所有者と調整して合意形成を図ることが重要であることを記載。

五、マンションの管理の適正化に関する啓発および知識の普及に関する基本的な事項国、地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士等は、相互に連携し、ネットワークを整備するとともに、管理組合等に対する必要な情報提供および相談体制の構築等を行う必要があることを記載。

六、マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項地方公共団体においては、地域の実情を踏まえた上で関係団体等と連携しつつマンション管理適正化推進計画を策定することが望ましいことを記載し、同計画策定に当たって留意すべき事項を記載。

七、その他マンションの管理の適正化の推進に関する重要事項その他、マンション管理士制度の一層の普及促進や管理計画認定制度の適切な運用等のマンションの管理の適正化の推進に関する重要事項を記載。

管理計画認定制度

都道府県等によるマンション管理適正化の推進

高経年化したマンションの急増やマンションの大規模化等によって区分所有者の合意形成の困難さが増しており、管理組合の自主的な取組だけではマンション管理の適正化を図ることに一定の限界があります。

現在でも、マンションが多く所在する地方公共団体を中心に、管理組合向けのセミナーや相談会の開催、専門家の派遣等が行われているところですが、改正法により、マンション管理に関する地方公共団体の関与を法定化することで、その取組を後押しし、各地のマンションの管理の適正の推進の底上げを図ることとしたものです。

具体的には、都道府県等(市および東京23区の区域は市や区、町村の区域は都道府県)は、基本方針に基づき、マンション管理適正化推進計画を策定できることとしており、各地域における計画的な取組を推進することとしています。

さらに、地方公共団体は、管理適正化のため、必要に応じて、管理組合に対して指導・助言(著しく不適切な場合は勧告)をすることができることとしており、管理適正化に向けて、管理組合の運営等への関与を可能としています。この助言等の対象とならないマンションについても、将来的に管理不全に陥り外部不経済を生じさせるような状況を未然に防止する必要がある一方、都道府県等が区域内全てのマンションに助言等をすることは現実的ではないことから、各管理組合による管理適正化に向けた自主的な取組を誘導するための施策が必要です。

そこで、マンション管理適正化推進計画を作成した都道府県等において個々のマンションの管理計画を認定することができるようにしており、認定を取得したマンションが市場で評価されることを通じて、区分所有者全員の適正な管理への意識の向上や管理水準の維持を図ることとしています。

具体的にはマンション管理者等からの申請に基づき、マンションの管理方法、資金計画、管理組合の運営状況等を記載した一定水準以上の管理計画を都道府県等が認定することとし、認定は5年ごとの更新制としました(図5)。

図5-管理計画認定制度

マンション標準管理規約の改正について

上記のとおり、マンション管理適正化法の改正が行われ、その施行に向けた準備が進められているところですが、このほか、昨年は、新型コロナウイルス感染症の惑染拡大等を契機に、ITを活用した総会の開催の検討等、社会情勢の変化を踏まえたマンションの管理のあり方について見直しを行う必要が生じました。

これを踏まえ、国土交通省においては本年6月に各管理組合の管理規約のモデルとして示しているマンション標準管理規約およびそのコメントの改正を行いました。

主な改正内容は以下となります。

マンション標準管理規約(単棟型)の改正

1.ITを活用した総会・理事会について

今般、新型コロナウイルス惑染症の感染拡大やデジタル化等の社会情勢の変化を踏まえ、ITを活用した総会・理事会の開催が可能であることを明確化し、その実施に当たっての留意事項等を以下のとおり記載しました。

〇 ITを活用した総会等の会議を実施するために用いる「WEB会議システム等」の定義を定義規定に追加しました(第2条) 。

〇 理事長による事務報告がITを活用した総会等でも可能なことを記載(第38条関係コメント) 。

〇 ITを活用した総会等の会議を実施するに当たっては、WEB会議システム等にアクセスするためのURLを開催方法として通知することが考えられることを記載しました(第43条および同条関係コメント(総会)、第52条関係
コメント(理事会)) 。

〇 ITを活用した議決権の行使は、総会や理事会の会場において議決権を行使する場合と同様に取り扱うことを記載しました(第46条関係コメント(総会)、第53条関係コメント(理事会)) 。

〇 ITを活用した総会等の会議の実施が可能であることおよび定足数を算出する際のWEB会議システム等を用いて出席した者の取扱い等について記載しました(第47条および同条関係コメント(総会)、第53条および同条関
係コメント(理事会)) 。

2. マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応について、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を踏まえ、以下の事項を記載しました。

〇 感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合における共用施設の使用停止等を使用細則で定めることが可能であることを記載しました(第18条関係コメント) 。

〇 感染症の感染拡大の防止等への対応として、「ITを活用した総会」を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、総会の延期が可能であることを記載しました(第42条関係コメント) 。

3. 置き配について

配達ドライバーの不足や新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴う非接触型生活様式の一般化等の社会情勢の変化を踏まえ、岡き配を認める際の)レールを使用細則で定めることが考えられることおよび置き配を認める際には長期間の放閻や大量・乱雑な放買等により避難の支障とならないよう留意する必要があること等の留意事項を記載しました(第18条関係コメント) 。

4. 専有部分配管について

共用部分と専有部分の配管の一体的な工事を実施する場合に、修繕積立金から工事費用を拠出するときの取扱いとして、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の工事について定め、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行してエ事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要であることを記載しました(第21条関係コメント) 。

5. 管理計画認定および要除却認定の申請

昨年のマンション管理適正化法及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「マンション建替円滑化法」という。)の改正を踏まえ、総会の議決事項として、管理計画の認定の申請(認定の更新の申請および変更の認定の申請を含む。)および要除却認定の申請を追加し、これに合わせて規定順を整理しました(第48条) 。

6.その他所要の改正

上記のほか、改元に伴う記載の適正化(第15条関係コメント等)や書面・押印主義の見直し(第17条等)等を行うための改正を行いました。

マンション標準管理規約(団地型)の改正

上記のほか、昨年のマンション建替円滑化法の改正による敷地分割制度の創設等を踏まえ、これに合わせて以下の改正を行いました。

1. 敷地分割事業と分割請求禁止規定との関係性

第11条に相当する規定があった場合であっても、改正法による改正後のマンション建替円滑化法第115条の4第1項に基づく敷地分割決議による敷地分割は禁止されるものではないことを記載しました(第11条関係コメント) 。

2.団地修繕積立金および各棟修繕積立金

団地修繕積立金および各棟修繕積立金の使途として「敷地分割に係る合意形成に必要となる事項の調査」を記載しました(第28条および同条関係コメント(団地修繕積立金)、第29条および同条コメント(各棟修繕積立金)) 。

3.招集手続

敷地分割決議を行うための団地総会の招集手続を記載しました(第45条および同条関係コメント) 。

4. 団地総会の会議および議事

敷地分割決議の決議要件を記載しました(第49条および同条関係コメント) 。

5.議決事項

団地総会の議決事項として敷地分割決議を記載しました(第50条) 。

おわりに

我が国における国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与するためには、管理組合がマンションを適正に管理するとともに、行政はマンションの管理状況、建物・設備の老朽化や区分所有者等の高齢化の状況等を踏まえてマンションの管理の適正化の推進のための施策を講じていく必要があります。