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区分所有法③-集会および規約

区分所有法③-集会および規約

区分所有法③-集会および規約

① 集会

区分所有者は、全員で、建物、その敷地および附属施設の管理を行うための団体を構成し、本法の定めるところにより、「集会」を開くことができる(3条) 。

この「集会」は、区分所有者の団体の最高意思決定機関である。

建物等の管理については、原則としてこの「集会」の決議により決定されるが、例外として、後述する「書面または電磁的方法による決議(45条)」、「公正証書による規約の設定(32条)」がある。

1. 集会の招集(34条)

 

集会の招集義務

管理者等(管理組合法人については、「理事」をいう。 以下同じ)は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない(同1項・2項)

集会の招集権者 管理者等あり 原則

経営者等

例外

区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は、原則として、管理者等に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求できる。

ただし、この定数は、規約に減じることができる(同3項)

管理者等なし

区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は、原則として、集会の招集を請求できる

ただし、この定数は、規約で減じることができる(同5項)。

管理者等が選任されていない場合、毎年1回の集会開催の義務はない。

 

ケーススタディ

【集会招集の考え方】

2週間以内にその請求日から4週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかったときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集できる(同4項)。

区分所有法③-集会および規約

2. 集会召集の通知(35条)

(1)招集通知の発信時期等(同1条)

原則

集会の招集通知は、会日より少なくとも1時間前に、「会議の目的たる事項(集会の議題)」を示して、各区分所有者に発しなければならない。

例外 1週間という期間は、規約で伸縮(伸長・短縮)することができる。

コメント

① 招集通知

(ア)建替え決議等を会議の目的とする集会の招集適知は、会巳よリ少なくとも2ヵ月前。

(イ)規約の設定・変更・廃止等の場合は、会議の目的たる事項を通知するだけでなく、後述(5)のとおリ、「その議案の要領」も通知しなければならない(同5項)。

(ウ)賃借人など専有部分の占有者に対して通知する必要はない。

しかし、一定の占有者には、利害関係があると集会に出席して意見を述べる権利があるので、建物の見やすい場所に掲示する必要がある。

② 建替え決議等の場合、期間は、規約で伸長できる。

(2) 専有部分の共有者に対する通知

専有部分が数人の共有に属するときは、この通知は議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる(同2項)。

(3)通知場所(同3項)

区分所有者が管理者等に対して、集会の通知を受ける場所を 通知していた場合 通知していた場所に通知する
通知していなかった場合

区分所有者の所有する専有部分か所在する場所に通知する

① この通知は、通常それが到達すべき時に、到達したものとみなされる。

つまり、通知が延着しても、また現実に区分所有者に到達しなくても、招集の通知が適法にされたことになる。

② 前記の通知をしていた場合でも、区分所有者が専有部分に現に居住していたり、また、通知をしなかった場合でも、区分所有者が現に居住する建物外の場所が判明していれば、そこへ通知してもよい。

(4) 掲示による通知(同4項)

次のいずれかの場合には、規約に特別の定めがあれば、掲示により通知できる。

建物内に住所を有する区分所有者

建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。

掲示事項は明示されていないが、通知事項と同様に考えてよい。

管理者等に対して通知場所を通知していない区分所有者

① この通知は、その掲示をした時に、到達したものとみなされる。

② 建物内に住所を有しない者で、その通知場所を通知した区分所有者には、その場所にあてて個別に通知する必要がある。

(5)重要な決議事項の場合の通知(同5項)

集会で、次の決議をしようとする場合には、集会の招集通知に、その議案の要領(i謡義内容についての案を要約したもの)を通知しなければならない。

① 共用部分の変更(軽微変更を除く)

② 規約の設定・変更・廃止

③ 建物の大規模滅失の場合の復旧

④ 建替え

⑤ 団地規約の設定についての各棟の決議事項

⑥ 団地内の建物の建替え承認決議事項

3. 招集手続の省略(36条)

集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開催できる。

つまり、区分所有者にあらかじめ通知された事項でなくても、決議することができる。

なお、この同意については、規約や集会の決議の形式をとる必要もないし、書面による必要もない。

4. 決議事項の制限(37条)

原則

集会においては、あらかじめ通知した事項(35条規定)に限られる(同1項)。

例外

① 規約で別段の定め「集会であらかじめ通知した事項でなくても決議できる」という定めがあれば、特別決議による事項以外の事項については、通知していない事項も決議できる(同2項)。

②招集手続が省略された場合(36条規定)は、この制限はされない。

なぜなら、招集通知自体がないのにこれらを適用しても、意味がないからである。

5. 議事(39件)

(1)決議事項の要件(同1項)

原則

区分所有者および議決権の各過半数の賛成で決める。

例外

規約に別段の定めがある。

この法律による

区分所有者および議決権の各4/5以上の賛成で決める。

区分所有者および議決権の各3/4以上の賛成で決める。

(2)書面・電磁的方法・代理人による議決権行使(同2項・3項)

原則

区分所有者自ら集会に出席して行使する。

例外

① 書面で行使する。

② 電磁的方法で行使する。

③ 代理人を選任して行使する。

コメント

③ 議事について賛否を記載した書面を集会の招集権者に提出する。 委任状の提出は該当しない。

これは上記表中の③「代理人を選任して行使する」による。

④代理人について

(ア)資格については、特に制限はないが、規約によって一定範囲の者に限定することは許されている。

(イ)代理人による議決権行使は、区分所有者本人から代理権を授与された代理人が集会に出席して議決権を行使する。

6. 議決権行使者の指定(40条)

専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者1人を定めなければならない。

7. 議長(41件)

原則

管理者等または集会を招集した区分所有者※の1人が議長となる。

例外

① 規約に別段の定めがある場合。

②  集会において、議長について別段の決議があった場合。

8. 議事録(42条)

(1) 集会の議事については、議長は、書面または電磁的記録により、議事録を作成しなければならない(同1項)。

(2) 議事録には、議事の経過の要領※1およびその結果※2を記載し、または記録しなければならない(同2項)。

(3) 議事録が書面で作成されているときは、「議長および集会に出席した区分所有者の2人(つまり3人)」が、これに署名押印しなければならない(同3項) 。

(4) 議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録されだ情報については、議長および集会に出席した区分所有者の2人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない(同4項) 。

(5) 議事録は、規約と同様、保管•閲覧および保管場所の掲示の対象となる(同5 項、33条)。

9. 事務の報告(43条)

管理者等は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

10. 占有者の意見陳述権(44条)

(1)区分所有者の承諾(黙示でもOK)を得て専有部分を占有する者(賃借人等)は、会議の目的たる事項について利害関係を有する場合、集会に出席して意見を述べることができる(同1項)。

コメント

⑤ 占有者は、代理人となる場合以外、議決権は行使できないことに注意しましょう。

(2) 上記(1)の場合には、集会を招集する者は、各区分所有者に招集の通知を発した後、遅滞なく、集会の日時、場所および会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない(同2項)。

ケーススタディ

Aが、管理組合に管理者Bが置かれているマンションの1戸を、その区分所有者と賃貸借契約を締結して占有している。

この場合、Bは、Aに対し、その居住場所に集会の通知をしなければならないのだろうか。

  ☟
集会を招集する者は、占有者Aに対し、通知をする必要はない。

11. 書面・電磁的方法による決議(45条)

(1) この法律・規約により集会において決議をすべき場合、区分所有者全員の承諾があるときは、書面・電磁的方法による決議ができる。

ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない(同1項)。

(2)この法律・規約により集会において決議すべきものとされた事項について、区分所有者全員の書面・電磁的方法による合意があった場合、書面・電磁的方法による決議があったものとみなされる(同2項)。

(3) この法律・規約により集会において決議すべきものとされた事項について、書面・電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。

(4) 「この書面・電磁的方法による決議に係る書面」や「上記(1)(2)の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録」については、後述する

②規約と同様、保管•閲覧および保管場所の掲示の対象となる(同4 項、33 条)。

(5) 集会に関する規定は、書面または電磁的方法による決議について準用する。

コメント

⑥ 「書面・電磁的方法による決議」とは、集会を開催しないで決議があったことにするものである。

これに対し、「書面・電磁的方法による議決権行使」とは、 集会に出席できない区分所有者にそのチャンスを与えるものである。 区別しておこう。

⑦ 一定の事項について、集会を開催せず、決議のやリ方を「書面・電磁的方法による決議」にする際、あらかじめ区分所有者全負の承諾を必要とするという規定である。

つまリ、このやり方に切り替えた場合、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催しないで、「書面・電磁的方法による決議」によリ、普通決議または特別決議を行うことができる。

これによリ、小規模マンションなど、集会開催場所を確保することが容易でない場合でも、区分所有者の意思を反映できる。

⑧ たとえば、マンション分譲において、分譲業者が分譲契約時にあわせて、規約(案)についての合意を各区分所有者から個別に書面等で取リ付け、全員の合意書面等が調ったところで規約を成立させるケース。

12. 集会の決議事項

集会の議事は、原則として「区分所有者および議決権仰の各過半数で決するが、重大なものについては、次のような特別な規定がある。

コメント

⑨ 「区分所有者」とは、区分所有者の頭数のことをいう。

「議決権」 (38条)とは、決議に参加する権利で、次のように考えられている。

原則

専有部分の床面積の割合による。

例外

規約による別段の定め(各区分所有者の所有する住戸1戸につき各1個とするなど)があれば、それによる。

以上のように、区分所有者の数以外に議決権をも決議要件としたのは、建物等の管理または使用については、各区分所有者の持分の大きさを考慮する必要があるからである。

(1)区分所有者およ噂義決権の各4/5以上の賛成を必要とするもの

これは、建物の建替え決議(62条1項)のみである。 

(2)区分所有者およ噂決権の各3/4以上の賛成を必要とするもの

次のものは、その重大性から、規約で、それ以外の方法による旨定めることはできない。

① 規約の設定・変更・廃止(31条1項)

区分所有者数 3/4以上 → 変更不可

議決権数   3/4以上 → 変更不可

②  管理組合法人の設立(47条1項)・解散 (55条2項)

③ 義務違反の区分所有者に対する「専有部分の使用禁止請求」(58条2項)

および「区分所有権の競売請求」のための提訴(59条2項)

④ 義務違反の占有者に対する「契約解除請求」および「占有者に対する専有部分の引渡し請求」の提訴(60条2項)

⑤ 建物価格の1/2を超える滅失(大規模滅失)の場合の復旧決議(61条5項)

⑥  共用部分の重大変更(区分所有者の定数のみ、規約で過半数まで減じてよい)
(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く) (17条1項)

(3)区分所有者および議決権の各過半数の賛成を必要とするもの

① 理者の選任、解任

② 義務違反者または義務違反の占有者に対する行為の差止請求の提訴

③  建物価格の1/2以下の滅失(小規模滅失)の場合の復旧決議

④ 共用部分の軽微変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの)

⑤  共用部分の管理

⑥  その他

② 規約

「規約」とは、区分所有者が全員で、建物、その敷地および附属施設の管理を行うために構成する団体が、組織活動を行うためのルールであり、もちろん、電磁的記録により作成することもできる。

区分所有法では、区分所有者相互間の事項について、規約で定めることを認め、区分所有者の団体の私的自治を認めた。

「規約」の使い方は、次のケースが考えられる。

①  区分所有法で原則を定める場合に、「規約」で細則を定める。

②  区分所有法に定めがあっても、区分所有法が許容する場合は、「規約」で別段の定めをする。

③  区分所有法に規定がない場合に、「規約Jで定める。

1. 規約で定めることができる事項(30条1項・2項)
(1)建物・敷地・附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項。 原則

法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

※ 「法律に定めるもの」には「絶対的規約事項」と「相対的規約事項」がある。
.. 後述h土江E山口参!! t

※1 建物

「専有部分に1屈する配特について定期に点検・補修を行い、共同の管理に服
せしめる旨の規約」「専有部分を居住以外の目的で使用することを禁止する規
約」「動物の飼育を禁止する規約」など。

※2 管理または使用

① 「管理」とは、共用部分の点検・補修、管理費・修繕積立金の負担に関する
事項など。

② 「使用」とは、「専有部分の居住目的以外の使用禁止」「敷地内での駐車方 強行規定に反するような規約は定め」など。

※3 区分所有者相互間の事項

区分所有者と区分所有者以外の第三者との間の事項を規約で定めることはできないという意味。

例外

強行規定に反するような規約は定めることができない。

 

(2) 一部共用部分に関する事項

原則

一部共用部分の区分所有者が、規約で定めることができる。

【例】

上層階専用と中層階専用の一部共用部分たる2つのエレベーターがあった場合

大規模修繕・機種の更新

⇒ 右記①に該当し、区分所有者全員の規約で定める。

 

日常の管理(清掃・小規模修繕)・使用方法

⇒ 一部の区分所有者の規約で定めることができる。

例外

一部共用部分の区分所有者が、規約で定めることができない場合

① 区分所有者全員の利害に関係するとき

※ たとえば、「一部共用部分の外装が建物全体の外観に影押を与える楊合の当該部分の外装」「一部共用部分であるエレベーター昇降機の機種の更新が区分所有者全員に影響を与える楊合におけるその更新」など。

② 区分所有者全員の規約に定めがあるとき

※ 一部共用部分の日常の管理など区分所有者全貝の利者に関係しない事項でも、建物全体の管理を円滑に行うために全員の規約で定められる。

この楊合、一部の区分所有者が、これと別の規約を設定したり、全員の規約を変更・廃止できない。

※ 本法に特別の規定がない限り、規約を定めるにあたり、「区分所有者以外の者」の権利を害せない。

一部の区分所有者以外の区分所有者は、「区分所有者以外の者」に該当する。

たとえば、一部供用部分の階段室または通路の一部をごみ置場として使用することを一部の区分所有者の規約で定めた場合、そこに隣接する他の区分所有者に影響を与えるときは、その者の権利を害することになるので、定められない。

(3)  (1)(2)の規約は、専有部分・共用部分または建物の敷地・附属施設(建物の敷地・付属施設に関する権利を含む)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的および利用状況ならびに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない(30条3項) 。

(4)  (1)(2)のように規約で定める場合、区分所有者以外の者の権利を害せない。

(5)  規約は、書面または電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして一定のものをいう) により作成しなければならない。

 

Step Up 「規約で定めることができる事項」とは

〇 絶対的規約事項に関する条文例

①  4条2項(規約共用部分の定め)

(2) 5件1件 ・2件

(3) 11条2項(管理所有)

④ 14条4項(共用部分の共有持分の割合)

(5) 17条 1項

(6) 18条2項

(7)19

⑧  22条1項(専有部分の敷地利用権の分離処分を認める定め)

(9) 25条 1項

(10) 26条1項

(11) 27条 1項

(12)28

(13) 29条 1項

(14) 34条3項

(15) 35 項目 1 項目 = 4 項目

(16) 37条2項

(17) 38条、39条1項

(18) 49条6項

(19) 52条 1項

(20) 61条4項

 

〇相対的規約事項に関する条文例

(1) 7条 l項

②  26条4項(管理者への訴訟追行権の付与)

(3) 33条1項、42条5項、45条4項

④ 49条5項(管理組合法人の代表理事または共同代表の定め)

 

(2) 強行規定(当事者間の合意にかかわらず適用される規定)に反する規約の例

① 管理所有者は、共用部分の重大変更ができないが、これをできるように変えること

② 集会の招集請求に必要な「区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上」という定数を増加させること

③ 建物の建替え決議に必要な「区分所有者および議決権の各4/5以上」という要件を変えること

④ 特別決議に必要な「区分所有者および議決権の各3/4以上」という要件を変えること

⑤ 共用部分の重大変更において、「区分所有者および議決権の各3/4以上」という要件のうち、議決権数を変えること

2. 規約の設定・変更・廃止(31条1項)

原則として「集会の決議」で行うが、例外規定として、「①集会11. 書面・電磁的方法による決議」(45条)と公正証書による規約設定の特例(32条)がある。

(1) 規約とは、区分所有者相互間のルールであり、原則として区分所有者および議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で、設定・変更・廃止をすることができる。

※1 「使用細則等」と「規約」の関係

たとえば、敷地の一部を一定数の区分所有者のための駐車場として使用するために使用権を認めることがあり、その使用権が認められる区分所有者の選定方法やその使用料については、使用細則・協定書・細則・規則等の名称で定めることができる。

この「使用細則等」は、区分所有建物の規約以外の定めであるが、「規約に基づいて」定められるものと「規約に基づかない(集会の決議等)で」定められるものがある。 この「使用細則等」という名称が付されていても、これを規約として定める旨が明らかなら「規約」の規定に従う。

※ 2 定数を規約で増減できない。

(2) 規約の設定・変更・廃止が、「一部の区分所有者の権利に特別の影響」を及ぽす場合は、その者の承諾を得なければならない。

※ その影響が区分所有者全体に一律に及ぶ場合、個々の区分所有者の承諾は必要ない。 たとえば、居住用マンション専有部分の使用について居住目的以外の使用を禁止する旨の規約や動物の飼育を禁止する旨の規約などは、その影響が区分所有者全体に一律に及ぶので、区分所有者の中に専有部分の営業目的での使用希望者や動物の飼育希望者がいても、その区分所有者の承諾は得なくてよい。 あくまで、多数者の意思により少数者の権利が制限・否定されないよう配慮したものである。

【判例】

この「特別の影響」を及ぽすか否かについて、動物の飼育を禁止することは、飼い主の身体的障害を補完する意味を持つ盲導犬の場合のように何らかの理由によりその動物の存在が飼い主の日常生活•生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合を除いて、「特別の影響」にはあたらないと判断された(東京高判平6.8.4)。

したがって、マンションの専有部分内で犬が飼育されている場合でも、犬を飼育している区分所有者の承諾を得ることなく、犬の飼育を禁止する内容に規約を改正できる。

3. 一部共用部分に関する事項についての区分所有者全員の規約の設定・変更・廃止(31条2項)

一部共用部分に関する事項については、区分所有者全員の利害に関係しないものについて、区分所有者全員の規約で定めることができ、これを集会の決議で決定できる。

しかし、一部の区分所有者のみの所有に属するものについて、これらの者の意思を考慮しないとすることは不適当である。

①  一部共用部分の区分所有者の1/4を超える者が反対したときはできない。

(または)

②  一部共用部分の区分所有者の議決権の1/4を超える議決権を有する者が反対したときはできない

4. 公正証書による規約設定の特例(32条)
「最初」に建物の専有部分の「全部を所有する者」(分譲業者等)は、公正証書剛こより、規約を設定できる。

① 規約共用部分に関する定め(4条2項)

② 規約敷地に関する定め(5条1項)

※  ①②は、分譲前にその定めの有無・内容を確認することが一般的である。

③ 敷地利用権の分離処分ができる旨の定め(22条1項ただし書)

※ 中高層マンション等では、事実上適用される例は少ない。 しかし棟割り長屋的構造(タウンハウス・テラスハウス等)では、この規約を設定することも可能である。

④ 敷地利用権の持分割合(22条2項ただし書)

※  原則は、専有部分の床面積の割合によるが、持分割合に端数が生じ、計算がめんどうな場合では、この規約を設定することが多い。

※ 「共用部分の持分に関する定め」は上記①~④に含まれない。

※1 いったん専有部分が複数の区分所有者に帰属後、専有部分の全部を取得した者はダメ。

※2 区分所有権は成立したが、その各専有部分が、まだ個別の区分所有者に帰属しない段階でその全部を所有している者のこと。

※ 3 「所有する者」が規約を設定できるので、一般的には建物の完成前や区分所有権成立前はできないが、専有部分の全部を所有することを条件に設定することは許されると考えられている。

コメント

⑩ 「公正証書」とは、私法上の権利関係の事実. について、公証人役場で作成された文書のことをいう。 証明力が高いので、トラブルを避けるのに役立てることができる。

5. 規約の保管・閲覧(33条)
(1)保管(同1項) ① 管理者等あり

管理者等が保管しなければならない。

管理組合法人については「理事が管理組合法人の事務所において」保管する。

② 管理者等なし

規約または集会の決議により定められた次の者が保管しなければならない。

・建物を使用している区分所有者

・その代理人

【例】 賃借人・区分所有者と同居している者等)

(2)閲覧(同2項) 「利害関係人」からの請求があったとき 原則

規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該記録された情報の内容を一定方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒めない

例外

「正当な理由がある場合」は、拒める

※ 管理業務の日時以外の請求など。

(3)保管場所の掲示(同3項)

建物内の「見やすい場所」に掲示しなければならない。

※ 管理組合所定の掲示場、集会室・管理人室・建物の出入口など。

この掲示義務に反しても、過料には該当しない。

※ 規約そのものを掲示するのではない。

コメント

⑪ 「 集会の議事録」「書面・電磁的方法による決議の書面」「電磁的方法により作 .成 される電磁的記録」においても、保管•閲覧義務および保管場所の掲示義務が あるが、「事務に関する報告書」については、これらの義務が定められてい ない ので注意しよう。

6. 規約・集会の決議の効力(46条)

(1)規約および集会の決議は、区分所有者はもちろん、区分所有者の包括承継人(相続、合併等により権利義務を一切承継する者)、特定承継人にもその効力が及ぶ(同1項)。

(2) 占有者は、建物またはその敷地もしくは附属施設の使用方法について、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う(同2項)。