マンションみらい設計 マンション管理の基礎知識

区分所有法②-管理者・管理組合法人

 

第2節 管理者・管理組合法人

①管理者

そもそも共用部分等の管理を行うのは、区分所有者全貝であるが、実際に全員で共同して行うのは困難である。ぞこで、管理を円滑に行うためには、特定の者に権限を与えて管理を行わせるのがよい。

「管理者」とは、本法の規定により、建物の保存・管理を行うために選任され、その就任を承諾した者である。

【管理者の権限等】

 

① 管理者は、「共用部分や区分所有者全員の共有に属する敷地および附属施設を保存(これらの滅失・損傷を防止して現状の維持を図る)」し、「集会の決議を実行門し、「規約で定めた行為」をすることについて権利および義務を負う(同l項) 。

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③ たとえば、エレベーターの点検・階段室等の破損個所の小修繕等をいい、各区分 所有者もできるし管理者もできる。

④ たとえば、共用部分の清掃のために人を雇うことが集会の決議で決められれば、管理者は、被用者を決め雇用契約を結ぶことができる。

② 管理者は、上記①の職務に関し、区分所有者全員を代理する見共用部分についての損害保険契約に基づく保険金額ならびに共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求および受領も同様である(同2項) 。

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⑥ 管理者の代理権について

(ア)管理者は、区分所有者の「団体」を代理・代表するものではない。

(イ)管理者は、区分所有者の代理人として法律行為を行い、この法律行為の効果は区分所有者の全員に帰属する。

(ウ)管理者は、代理行為の際、「管理組合等」の名を示す必要がある。

③ 訴訟追行権

訴訟に際し、区分所有者全員の名で行うことは、なかなか大変であろう。そこで管理者は、「規約または集会の決議」により、上記①および② (保険金・共用部分等についての損害賠償金・不当利得による返還金の請求・受領)の職務に関して区分所有者のために、原告または被告となることができる(同4項) 。

ただし、管理者の地位にあれば、当然、その訴訟追行権をもつわけではない。また、「規約または集会の決議」によれば、管理者以外の者を訴訟追行者とすることができる。

規約により原告または被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない(同5項) 。

つまり、いつ原告・被告になったかを明らかにする必要がある。

Step Up 管理者の訴訟追行について

(ア)管理者は区分所有者全員のために訴訟を追行するのであり、「区分所有者のうちの一部の者」のためではない。

ただし、管理費の滞納者に支払請求する場合、その者は除外される。

また、「管理組合」のためでもない。

(イ)【例】管理者が区分所有者を代理して締結した契約上の債務の履行を求める訴え

・損害保険金請求訴訟

・共用部分等の補修等の工事の不履行に基づく損害賠償請求訴訟

・共用部分の不法占拠者に対する明渡し請求訴訟

・管理費の支払い請求訴訟

・金銭債権とされる瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求訴訟

・不当利得返還請求訴訟等

(ウ)管理者が自己の名で訴訟当事者になることで、区分所有者の代理人となるのではない。

(3) 管理者の行為の効果(26条3項)

管理者がその職務の範囲内で第三者とした行為の効果は、区分所有者に帰属することになる。

規約で管理者の代理権に制限行使できる事項・範囲・行使方法等についての制限を加えた場合であっても、これを善意の第三者に対抗できない。

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⑥ 「 菩意の第三者」とは、区分所有者以外の者で、その制限について知らず、その制限によって利益を害される者をいい、この者に対し、たとえば、集会の決議で、「特定の共用部分について管理者は代理権を有しない」と決めても、対抗で きない。

(4) 管理所有(27条)

共用部分については、原則として区分所有者全員の共有とされるし、一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分については、これを共用すべき区分所有者の共有とされる。

しかし、これら共用部分の所有関係は、規約で別段の定めができ、区分所有者のうち、特定の者を所有者と定めることができる。

また、管理者切ま、規約に特別の定めがあるときは、共用部分Rを単独所有することができる(同1項)。

規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者または管理者のことを管理所有者というが、この管理所有者は、管理に必要な範囲内Rでしか所有権の行使ができない隻このような規定を定めた理由は、もっぱら管理者による共用部分の管理行為を円滑にさせるためである。

 

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⑦ 管理者となる者は、区分所有者か区分所有者以外の者かを思わない。

管理者でない区分所有者以外の者を所有者と定めることはできない。

⑧ 「敷地」「共用部分以外の附属施設」については、管理者を所有者と定めることはできないので注意しよう。

⑨ 管理のための所有であるから、譲渡・担保権設定は含まれず、賃貸も原則制限される。

⑩ たとえば、共用菌分を管理者が所有する旨は、規約で定められたことによリ公示され、移転登記はされない。

(5) 管理者の行為による区分所有者の責任等(29条)

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⑪ たとえば、エレベーター等の共用郭分の修繕のために区分所有者を代理して修繕業者と請負契約を締結するなどである。

これに対し、「管理者の職務の範囲外の行為」については、区分所有者は、第三者に対し責任を負わない。たとえば、「管理者が、集会の決議に基づかずに階段室をエレベーター室に改造するため請負業者との間で契約するなどの共用郁分の変更を行った」場合等である。

ただし、「管理者の職務権限が消滅しているにもかかわらず取引を行った場合で、管理者と取引をした第三者が善意・無過失」なら、区分所有者が責任を負うことになる(民法110条、112条)。

⑫ 管理者は、その職務に関して区分所有者を代理するので、その効果は各区分所有者に、共用那分の持分の割合に応じて帰属する。

⑬ 分譲マンションでは、規約によリ定めることが多い。たとえば規約によリ金額をもって定めることになっていれば、その金額を各区分所有者の割合に引き直 したものが、区分所有者の責任の割合となる。

Step Up 委任の規程の準用(28条)

この法律および規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

【例①】

管理者が、死亡・破産手続開始の決定・後見開始の審判を受けると、委任契約は終了する(民法653条)。

【例②】

管理者には、善管注意義務があり、違反した場合、法的な責任を問われる(民法644条、415条)。

管理者の責に帰すべき事由がない場合には、法的責任を負う必要がない。

【例③】

任期途中の管理者を集会によって解任するためには、正当事由の存在を必要としない。

なぜなら、民法上、委任は各当事者がいつでも解除できるからである(民法651条l項)。

【例④】

管理者が訴訟等に「要する費用」・「要した費用」は、弁護士費用を含めて、各区分所有者に対し、「前払い」・「償還」請求できる。

② 管理組合

区分所有者は、全員で、建物、その敷地、附属施設の管理を行うための団体(以下管理組合という)を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる。「一部共用部分」をそれらの区分所有者が管理するときも、同様である(3条)。

この団体は、法人化されないとそのものの名義の登録が認められないなど、実務上不都合が残る。

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⑭ 団体であリながら、法律上の主体と認められていないものを「権利能力なき社団」という。なお、区分所有者が1人しか存在しない段階では、管理組合は存在しない。

③ 管理組合法人

管理組合に法人格が与えられると、その理事を選任して、法人を代表させ、一元的に管理行為をさせることができる。

管理組合が法人となるメリットとしては、管理組合法人名義で不動産登記ができたり、団体財産と個人財産の区別が明確にできたり、法人登記により、組織内容が公示され、取引の安全が図れることがあげられる。

1.成立(47条)

(1)成立要件

管理組合は、次の要件を備えることによって法人15となることができる(47条1項)。

なお、区分所有者の数が30人未満の管理組合でも法人化はできるが、一般社団•財団法人法(平成18 年法律48 号)によると、社員2 人以上が必要であるとしている。

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⑮法人格取得のメリット

・法人として権利・義務の主体となれるので、対外的(第三者との取引関係)においても、対内的(団体と区分所有者の関係)においても、法律関係が明確となる。

・団体財産と倦人財産との区分が甲確となる。つまり団体財産としての不動産登記、預金等の行為が、管理組合法人名義でできる。

・法人の存在や代表者等が公示され、第三者としては安心して取引ができる。

① 区分所有者および議決権の各3/4以上の多数による集会の決議(特別決議)で、法人となる旨およびその名称・事務所を定める。

法人の事務所は、区分所有建物の所在地でも、それ以外でもよく、数個あってもよい。

この場合、そのうち1つを主たる事務所とする必要がある。なお、定款の作成は不要である。

② 主たる事務所の所在地で、法人登記をする。

区分所有建物の所在地で法人登記をするのではない。

この法人は、営利法人・公益法人のいづれでもなく、一般社団法人である。

Step Up 管理組合法人に関して登記すべき事項

(47条3項、組合等登記令2条2項)

① 目的・業務

② 名称

③ 事務所

④代表権を有する者の氏名※ 2、住所および資格

⑤共同代表の定めがあるときは、その定め

(2)管理組合法人の成立前の集会の決議、規約および管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき、効力を生じる(47条5項)。

(3)管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。損害保険契約に基づく保険金額ならびに共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金を請求し、受領できる (47条6項)。

(4)代理権に加えた制限

管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できない(47条7項)。

理事の代理権に加えた制限も、善意の第三者に対抗できない(49条の2)。

理事は、規約または集会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任できる(49条の3)。

(5) 管理組合法人は、規約または集会の決議により、その事務(保険金額・損害賠償金・不当利得による返還金の請求および受領を含む)に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができる(47条8項)。

(6) 管理組合法人は、規約により原告または被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、集会の招集に関する規定(35条2項~4項)を準用する(47条9項)。

(7) 管理組合法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとされる(47条10項、一般社団法人および一般財団法人に関する法律4条)。また、管理組合法人は、代表理事がその職務を行うについて第三者に加えた損害賠償責任を負う(47条10項、一般社団法人および一般財団法人に関する法律78条)。

また、この場合、不法行為をした当該代表理事も第三者に対する損害賠償責任を負う(民法709条) 。

(8) 区分所有者全員の代理人である管理者の存在は、管理組合法人とは相容れないものであるため、管理者(25条~ 29条)等の規定は、管理組合法人には適用されない(47条11項)。

Step Up 財産目録・区分所有者名簿(48条の2)

① 管理組合法人は、設立のときおよび毎年1月から3月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。

ただし、特に事業年度を設けるものは、設立のときおよび毎事業年度の終了のときに財産目録を作成しなければならない(1項)。

② 管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない(2項)。

2.理事(48条)・監事(50条・51条)

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(ア)「理事に事故があリ理事会に出席できない場合、その配偶者または一親等の親族に限リ、代理出席できる」旨の規約の有効性。

【判例】

理事に事故がある場合に限定し、被選任者の範囲を理事の配偶者または一親等の親族に限って、当該理事の選任に基づいて、理事会への代理出席を認めるものであれば、管理組合の理事への信任関係を害するものとはいえない。

(イ)仮理事の選任(49条の4第1項)

理事が欠けた場合、事務が遅滞することによリ損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人または検察官の請求によリ、仮理事を選任しなければならない。

(ウ)理事になりうる資格

区分所有法上では特に定められておらず、区分所有者以外の者で管理について専門知識を持つ者を理事として選任してよい。

「一般社団法人および一般財団法人に関する法律65条1項1号」の規定によれば、理事の資格は、自然人に限られ、法人はなれないと考えられている。

なお、未成年者・被保佐人は、保護者の同意があれば、理事になれる。

(エ)理事が数人ある場合の管理組合法人の事務(49条2項)規約に別段の定めがないときは、理事の過半数で決する。

(オ)理事の代表

代理人のように本人(法人)と相対立する地位になく、代表である理事の行為が法人の行為となる点で代理と異なる。

他方、法人は、代表である理事の行為によって直接に権利・義務を取得する点で代理と酷似する。

⑰ 監 事は、理事または管理絹合法人の使用人と兼ねてはならない (50条2項)。

自分で自分を監査することになリ、意味がないからである。また、これ以外の資格については、理事と同様に考えられている。

⑱ たとえば、管理組合法人所有の土地を理事が買う場合、この売買価格が適当であ っても、この取引は利益相反事項と考えられる。

逆に、理事が法人に無利息無担保の金銭貸付けをする等の行為なら、利益相反事項とはならず、理事が法人を代表する。

⑲ 数人の理事が共同して管理組合法人を代表する場合、他の理事ではなく、監事が法人を代表すると解されている。なお、各自代表権を有する理事が数人ある場合、理事の 1人と管理組合法人との間に利.益相反事項があれば、他の理事が 法人を代表すると解されている。

Step Up 事務の執行(52条)

管理組合法人の事務は、「この法律に定めるもの」※ 2のほか、すべて「集会の決議」によって行う。

ただし、「次の事項を除いて」は、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。

① この法律に集会の決議につき、特別の定数が定められている事項(特別決議による)

② 義務違反者に対する差止請求訴訟の提起に関する事項(普通決議による)

 

 

 

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