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「マンション管理業者への全国立入検査結果(令和7年度)― 112社中31社に是正指導、管理組合のチェックポイント」

2026年(令和8年)5月29日、国土交通省は「マンション管理業者への全国立入検査結果(令和7年度)」を公表しました。全国112社のマンション管理業者に立入検査を実施し、うち31社に是正指導が行われています。是正指導率は約28%――およそ4社に1社の割合です。

本記事では、独立系のマンション管理士・一級建築士の立場から、この検査結果の読み方と、管理組合が自らの管理会社をチェックするためのポイントを解説します。

全国立入検査とは何か

マンション管理業者は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(適正化法)に基づく国土交通省の登録業者です。登録数は1,735社(令和7年度末現在)、分譲マンションのストック戸数は約713万戸(令和6年末現在)に達しています。

国土交通省(各地方整備局等)は平成17年度から毎年度、管理業者の事務所等に立ち入り、法令の遵守状況を検査しています。検査の中心は次の5つの重要項目です。

  • 専任の管理業務主任者の設置
  • 重要事項の説明等
  • 契約成立時の書面の交付
  • 財産(管理費・修繕積立金)の分別管理
  • 管理事務の報告

いずれも、管理組合の財産と契約上の権利を守るための基本的な義務です。

令和7年度の検査結果 ― 是正指導は31社、前年度から増加

令和7年度は全国112社(前年度107社)に立入検査を行い、31社(前年度22社)に是正指導が行われました。なお、31社すべてで是正等がなされたことが確認されています。

適正化法の条項ごとの是正指導件数は次のとおりです。

是正指導事項(適正化法条項) 令和7年度 令和6年度
契約成立時の書面交付義務違反(第73条) 19件 10件
重要事項説明義務違反(第72条) 16件 14件
財産の分別管理義務違反(第76条) 5件 9件
管理事務の報告義務違反(第77条) 5件 9件
専任の管理業務主任者の設置義務違反(第56条) 4件 3件

指導率で見ると、「契約成立時の書面交付義務違反」が17.0%(前年度9.3%)とほぼ倍増し、「重要事項説明義務違反」14.3%(同13.1%)、「専任の管理業務主任者の設置義務違反」3.6%(同2.8%)も増加しました。

この結果をどう読むか ― 「契約手続きの基本」でのつまずきが最多

最も多かった違反は、契約成立時の書面交付(第73条)と重要事項説明(第72条)です。これらは、管理委託契約を結ぶ・更新するときの入口の手続きであり、管理組合側から見れば「自分たちがどんな条件で何を委託しているのか」を確認できる唯一の機会です。

ここでの違反が多いということは、契約内容を十分に説明されないまま更新が繰り返されているマンションが一定数存在する可能性を示しています。毎年の契約更新が「形だけ」になっていないか、管理組合側でも意識しておく必要があります。

一方、管理費等の分別管理(第76条)と管理事務の報告(第77条)の違反は前年度より減少しており、お金の管理そのものに関する指導は相対的に落ち着いています。

今後の重点 ― 管理業者管理者方式と「利益相反」の事前説明

今回の公表資料で注目すべきは、国土交通省が今後の方針として、管理業者管理者方式(管理会社が管理者を兼ねる方式)における利益相反のおそれがある取引の事前説明義務等を重点的に指導すると明言した点です。

令和7年に改正された適正化法・同法施行規則が令和8年4月1日から施行され、管理会社が管理者として自社や関連会社と取引を行う場合などの事前説明義務が導入されました。理事のなり手不足から管理業者管理者方式(第三者管理方式)を採用するマンションが増えるなか、「工事の発注先が管理会社の関連会社ばかり」といった利益相反の問題は、今後の管理業界の大きな論点です。国の検査がここに踏み込むことは、管理組合にとって歓迎すべき動きと言えます。

管理組合が自分でできる5つのチェック

立入検査は国が行うものですが、検査対象と同じ視点で、管理組合自身が管理会社をチェックすることができます。総会・理事会の際に、次の5点を確認してみてください。

  1. 契約更新時に重要事項説明を受けているか ― 更新のたびに、管理業務主任者による説明(説明会の開催または書面交付等)が行われているか。説明資料が「前年のコピー」のままになっていないか。
  2. 契約成立時の書面(第73条書面)を受け取っているか ― 契約締結後に、契約内容を記載した書面が管理組合に交付されているか。今回最も違反が多かった項目です。
  3. 管理費・修繕積立金の分別管理の方式を把握しているか ― 収納口座・保管口座の名義や印鑑の管理方法、保証契約の有無を、会計担当理事が説明できる状態か。
  4. 管理事務報告を毎年受けているか ― 事業年度終了後に、管理業務主任者から管理者(理事長)への報告が行われているか。報告書が保管されているか。
  5. 担当者・管理業務主任者の体制を確認しているか ― 事務所に専任の管理業務主任者が適正に配置されているか、担当フロントの変更が適切に通知されているか。

これらに一つでも心当たりのない項目があれば、管理会社に確認を求めることをおすすめします。誠実な管理会社であれば、すぐに資料を提示して説明してくれるはずです。

独立系コンサルタントの立場から

今回の結果は「管理会社の約4分の1が法令違反」という見出しだけを見ると不安になりますが、違反の多くは是正済みであり、制度としての検査・指導は機能しています。重要なのは、管理組合側が受け身のままでは、契約手続きの不備に気づけないという事実です。

当事務所は、管理会社から独立した立場のマンション管理士・一級建築士事務所として、管理委託契約の内容チェック、管理費の適正化、管理規約の改正、大規模修繕工事のコンサルティングまで、管理組合の側に立った支援を行っています。「うちの管理会社は大丈夫か」「契約書を一度専門家に見てほしい」という管理組合の方は、お気軽にお問合せフォームからご相談ください。

出典

※本記事は公表資料に基づく解説であり、個別の管理会社の評価を行うものではありません。

  • この記事を書いた人

分譲マンション総合支援事務所    一級建築士事務所       マンション管理士事務所       株式会社マンションみらい設計

マンションみらい設計®(商標登録済み)は、『管理組合・皆様のマンションの未来を住みやすく設計する』をテーマに設立しました。マンション管理のニーズを満たすために中核となる知識とノウハウはマンション管理を支援するうえで最も基本的な力と考えています。 長期修繕計画は、大規模修繕工事費の高騰で大幅な狂いを生じるケースがあります。 資産価値の維持向上のためには、各種工事費・工事内容が適正であるかがマンション長寿命化の鍵と言えます。 また、修繕積立金の額についても注視するポイントです。 マンションみらい設計®は、一級建築士事務所を併設するマンション管理士事務所です。 日常の管理から大規模修繕工事まで皆様が安心して依頼できる総合支援事務所です。

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