管理計画制度事務ガイドライン策定
国土交通省・管理計画制度事務ガイドライン策定
国土交通省は、11月30日、「マンション管理適正化法第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」を策定し公表した。
地方自治体が管理計画認定制度に係る事務手続きを円滑に行えるよう、認定基準の確認方法・確認に必要な書類・留意事項などをまとめた。
認定基準と確認対象書類(まとめ・一覧表)
認定基準 |
確認対象書類 |
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提出が必須である書類 |
必要に応じて提出が必要となる書類 | ||
(1) |
管理組合の運営 |
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① |
管理者等が定められていること |
・管理者等を選任することを決議した集会(総会)の議事録の写し ※管理規約で別段の定めをした場合は、管理規約の写しおよびその定めるところにより管理者が選任されたことを証する書類(理事会の議事録の写し等) |
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② |
監事が選任されていること |
・監事を置くことを決議した集会(総会)の議事録の写し ※管理規約で別段の定めをした場合は、管理規約の写しおよびその定めるところにより監事が置かれていることを証する書類(理事会の議事録の写し等) |
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③ |
集会が年1回以上開催されていること |
・認定申請日の直近に開催された集会(総会)の議事録の写し |
・年1回集会を開催できなかった場合の措置が図れたことが確認できる書類 |
(2) |
管理規約 |
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① |
管理規約が作成されていること | ・管理規約の写し | |
② |
マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時Iや管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報り管理等について定められていること |
・管理規約の写し | |
③ |
マンションの管理状況に取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)について定められていること |
・管理規約の写し | |
(3) |
管理組合の経理 |
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① |
管理費および修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること |
・認定申請日の属する事業年度の直前の事業年度の集会において決議された管理組合の貸借対照表および収支計算書 ※当該直前の事業年度がない場合には、申請日を含む事業年度における集会において決議された収支予算書 |
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② |
修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと |
・認定申請日の属する事業年度の直前の事業年度の集会において決議された管理組合の貸借対照表および収支計算書 ※当該直前の事業年度がない場合には、申請日を含む事業年度に届ける集会において決議された収支予算書 |
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③ |
直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3カ月以上の滞納額が全体の1割以内であること |
・当該直前の事業年度の各月において組合員が滞納している修繕積立金の額を確認することができる書類 ・確認申請日の属する事業年度の直前の事業年度の集会において決議された管理組合の貸借対照表および収支計算書 ※当該直前の事業年度がない場合には、申諸日を含む事業年度における集会において決議された収支予算書 |
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(4) |
長期修繕計画の作成および見直し等 |
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① |
長期修繕計画が「長期修繕計画標準書式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されていること |
・長期修繕計画の写し ※管理規約で別段の定めをした場合は、管理規約の写しおよびその定めるところによリ当該長期修繕計画を作成しまたは変更したことを証する書類 |
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② |
長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること | ・長期修繕計画の作成または変更を決議した総会の議事録の写し | |
③ |
長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が30年以上で、かっ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること |
・長期修繕計画の写し |
・マンションの除却その他の措置の実施が予定されている場合は、その実施時期が議決された総会の議事録の写し等 |
④ |
長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと |
・長期修繕計画の写し | |
⑤ |
長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと | ・長期修繕計画の写し |
・修繕積立金ガイドラインを基に設定する水準を下回る場合は、専門家による修繕積立金の平均額が著しく低額でない旨の理由書 |
⑥ |
長期修繕計画の計画期間内の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること |
・長期修繕計画の写し | |
(5) |
その他 |
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① |
管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応jを行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること |
・組合員名簿(区分所有者名簿)および居住者名簿を備えるとともに、年1回以上更新していることを確認することができる書類(これらの名簿を備えるとともに、年1回以上更新していることに関する表明保証書等) |
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② |
都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること |
※「事務ガイドライン」から抜粋
長期修繕計画作成・見直し「7年以内」
長期修繕計画の策定・見直しが「7年以内に行われている」かどうかを確認する際の起算日は、計画の作成・見直しを決めた総会決議日だとしている。
認定基準と確定対象となる書類を下表に示した。
「提出が必須である書類」とは11月1日に公布されたマンション管理適正化法の改正施行規則が定める書類を示す。
ガイドラインではまず、団地型・複合用途型における申請主体に言及。
団地型は区分所有法第68条に基づく管理規約がある場合は団地管理規約、ない場合は各棟の管理者等・団地管理組合管理者等となる。
複合用途型の申請主体は全体管理組合の管理者等が存在する場合は認定対象にならない店舗等を除く管理者等の連名で申請する。
管理組合の運営では監事の選任に関する留意点として「管理組合法人に置く監事は理事・法人の使用人と兼任できない」と提示。
兼任していないことを確認する、とした。
管理規約では「実際の履歴情報に関する書類の管理状況の確認は行わない」
管理規約では「修繕等の履歴情報の管理等」に関し、「実際の履歴情報に関する書類の管理状況の確認は行わない」を留意点に挙げている。
「財務・管理に関する情報の書面の交付」も同様としている。
管理組合の経理における「区分経理」では「預金通帳では区分掲示していることを確認できない」として、確認書類としては貸借対照表・収支計算書以外「認めない」としている。
「修繕積立金会計から他の会計への充当」では、長期修繕計画上の修繕積立金よりも多く積み立てられ、余剰が発生している場合でも「他会計への充当や区分所有者に還元している場合は基準に適合していない」とする考え方を打ち出している。
滞納額の確認では、収支計算書などで滞納月別の情報が掲載されていない場合、管理会社からの直近の月収報告書や各戸の収納状況に関する書類で確認する必要があるとしている。
長期修繕計画の作成および見直しでは標準様式に準拠
「長期修繕計画の作成および見直し等」における「標準様式への準拠」では、「準拠」について、「標準様式と同一の様式で作成していることを求めているものではなく」、同様式における考え方に基づいて計画を作成していれば「準拠」に該当するとしている。
具体的な確認方法を提示した(表①参照)。
①「準拠」の確認内容
①修繕工事の内容(19工事項目※) ※長期修繕計画標準様式第4-1号の推定修繕工事項目の19工事項目 ②修繕工事の概算費用 ③修繕工事のおおよその実施時期 ④修繕積立金の月当たリm単価 ⑤長期修繕計画書の計画期間が30年以上の設定期間であること ⑥申請日以降の残存期間において大規模修繕エ事が2回以上含むこと ⑦計画期間当初における修繕積立金の残高 ⑧計画期間全体で集める修繕積立金の総額 ⑨計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額 ⑩ (借リ入れがある場合)借リ入れの状況 |
「19工事項目」については、修繕周期が長期で計画期間内に実施予定がない場合や該当する設備がない場合などは、その旨が長期計画等の提出書類に記載があるかを確認するとしている。
長期計画の作成・見直しを決議した総会決議日が認定申請日から7年以内であることを確認するとした。
長期計画の計画期間が30年以上、残存期間の起算日は「認定申請日」としている。
長期計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている点では、残存期間の起算日は「認定申請日」としている。
申請時、大規模修繕工事を行っている場合は、当該大規模修繕を残存期間内の工事回数に含めるとしている。
「将来の一時的な修繕積立金」とは、長期修繕計画上「大規模修繕工事開始事業年度の前々年度の開始日から工事完了年度の翌々年度の終了日までの積立金総額の増加幅が2倍以上」となっており、この増額期間が同期間に限定されているケースが該当するとしている。
災害による復旧工事などで一時金を徴収した場合は「これによって認定を取り消すことは想定していない」としている。
修繕積立金の額、平均額が著しく低額でないこと
「計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」では「修繕積立金に関するガイドライン」で示した金額の下限値を下回るケースで、特段の理由がある場合に専門家が作成する「理由書」の理由例を提示している。(表②)
②理由書の理由例(理由書の作成できる専門家は、「マンション管理士」「建築士」
(例) 本マンションの修繕積立金の平均額は他のマンションと比較して低額となっている。 これは、本マンションが2000年に排水管および給水管の一斉更新工事およびエレベーター全機の交換工事を実施済みであリ、現在の長期修繕計画においてこれらの更新・交換工事を考慮する必要がないためである。以上のことから、本マンションの修繕積立金の平均額は、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で示す金額の目安を設定する際の参考とした事例の3分の2が包含される幅の下限値を下回っているが、本マンションにおける修繕積立金の水準は適正であリ、「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という要件に合致すると考えられる。 |
理由書を作成できる専門家は資金計画や工事内容などを把握しいる「マンション管理士」のほか「建築士」に限定している。
組合員名簿・居住者名簿の設置義務と1年1回以上の事態の確認
「組合員名簿・居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること」では、確認書類として「表明保証書」を提出してもらうことにしている。(表③)
③表明保証書の作成例
表明保証書 殿(計画作成都道府県知事等名を記載) 1.当管理組合では、組合員名簿(区分所有者名簿)を備えており、年1回以上更新していることを表明し保証します。 2.当管理組合では、居住者名簿を備えており、年1回以上更新しているとを表明し保証します。 〇〇年〇〇月〇〇日 マンション管理組合名 〇〇〇〇〇〇マンション管理組合 マンションの所在地 〇〇県〇〇〇市〇〇〇町〇〇番地 |
各名簿自体の提出は想定していない。
名簿の「更新」とは「内容に変更があれば名簿に反映している作業を年に1回以上行っていることを指す」と規定している。
管理計画認定マンションは管理組合が同意した場合、マンション名・住所・認定コードが公益財団法人マンション管理センターによる閲覧サイトで公開される。
「個々の管理計画の内容は公開されない」としている。