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マンション設備の基礎知識(設備編)

マンション設備の基礎知識(設備編)

マンションの設備の種類

戸建て住宅と違い、マンションには数多くの設備が備わっています。 供給を受げた水を各住戸に配水する「給水設備」、水をお湯に変える「給湯設備」、使い終わった生活排水や雨水を安全に下水道へ放流するための「排水設備」、室内の空気を入れ換えたり汚れた空気を屋外へ排出するための「換気設備」、火災時の消火活動のための「消火設備」、火災の発生をいち早く惑知して館内に周知する「自動火災報知設備」、 供給された電気を安全に使用するための「受変電設備」や「幹線設備」、共用部分に必要な照明や電源を確保するための「電灯コンセント設備」、テレビやインターネットを安定供給するための「情報通信設備J、落雷から保護するための「避雷設備」、その他エレベーターやインターホン、オートロック、オートドア、宅配ボックス、 ディスポーザー排水処理設備など名称を挙げるだけでも大変な種類があり、超高層マンションなどでは、さらに多くの設備が備わっており、これらの全てが適正に稼働することで日常の生活が成り立っているわけです。
これら設備のことを、普段の生活の中においてはほとんど意識することはないかと思いますが、当たり前の日常を維持していくためには、定期点検や法定点検、修理や修繕、予防保全、更新工事などの「維持管理」が必要なことは言うまでもなく、そのために必要な運転費や点検費が毎年の総会議案書の中の管理費会計に計上され、 一定年数を超えた比較的費用がかかる修繕においては修繕積立金会計から支出され、設備が維持されていきます。

毎年、何の設備にどれぐらい費用がかかっているのか、なかなかその全てを把握している居住者はもしかするとあまり多くはないのかもしれません。

本稿では、主立った設備を取り上げ、その機能や必要な管理を紹介しますので、少しでも自分の住まいに備わっている設備に興味を持っていただけたら幸いです(ただし、備わっている設備の種類は、マンションの規模などにより大きく異なりますのでご了承くださし%)。

給水装置

まずは、「必要な水量」、「安全で良質J、「適正な圧力」の水を全てのお宅の蛇口まで安定的に供給するための給水設備を見ていきます。表1はマンションにおける主な給水方式の特徴をまとめたものです。
かつてはマンションの屋上部分に水槽が設置される「高置水槽方式」が主流でしたが、近年では改修工事の際に高置水槽を撤去し、直結増圧方式などに変更する事例が増えてきました。 引き続き高置水槽方式を選択される場合は、高置水槽が現行碁準の耐震性能を有しているか専門家に診断してもらった上で、使用してください。
水槽は毎年1回の槽内面清掃と目視点検、水質の管理が必要になります。 給水ポンプは水の安定供給のため非常に重要な役割を担っています。 特に「ポンプ圧送方式」であれば、ポンプが故障して動かなくなってしまったら即断水になってしまう場合がありますのでメンテナンスがとても重要です。

水道本管からの引き込み管にポンプが直結された「直結増圧方式」の場合は、各自治体の水道条例により毎年1回の点検が義務付けられています。
水道メーターは計贔法の定めにより8年毎の交換が必要になりますが、メーター交換を行うべきメーターの所有者は地域により異なります。 例えば、東京都水道局の管轄であれば一部の例外を除き、各戸メーターの所有者は水道局である場合がほとんどなので、同局の負担で実施してくれます。
「適正な圧力」を安定確保するため、減圧弁という水圧を調整する装羅がマンションのどこかに設置される場合があり、最近では住戸ごとに「戸別減圧弁」を設置する形態が主流になりました。 この戸別減圧弁は10~15年の周期で交換が必要になります。 なお、「適正な圧力」とは、諸説ありますが現在の実務においては各戸メータ一部分において0.15MPa~0.3MPa(メガパスカル)としています(写真1)。

排水装置

排水には呼び名があり、便器からの排水を「汚水」、台所・洗面・洗濯. 浴室からの排水を「雑排水」と種別しています。 その他にも空調機などからのドレンや、雨水もあります。 ここでは、主に住戸内から排水される汚水と雑排水について取り上げます。
まず、室内に設置される衛生器具には図1(次頁)に示すような「排水トラップ」が必ず設けられています。 この排水トラップは、排水管や下水道から来る臭気や害虫を室内に侵入するのを防ぐためのもので、図2(次頁)のように常に水が溜まるようになっています。 この残留水を「封水」と呼びます。 封水の深さ(排水トラップの深さ)は、昭和50年建設省告示第1597号により5cm以上10cm以下と定められておりますが、図3(次頁)のような現象により
封水が無くなってしまうことを「破封」と言います。
そして、今回のパンデミックにおいて、新型コロナウイルス感染者の便や尿からウイルスが検出されることや、惑染者が増えた期間は下水道処理施設においても排水からウイルスが検出されたことが国内外で報告されていることを見ると、公共下水道に直結されている排水管からのウイルス侵入を防いでくれる、 実に単純で身近な存在の排水トラップはとても大切なものとして、再認識すべき設備だと思います。 排水は排水管の中を自然流下で流れていきますので、床下に隠れている横引き管は先下がりの勾配(管の傾き)と適正な口径が重要になります。 リフォーム工事においては、このあたりがおろそかになりがちな所で要注意です。 マンション標準管理規約においては、この横引き管は専有部分とし、立て管(合流継手を含む)は共用部分として第8条および別表第2に記載があります。 共用部分である立て管は、住戸の間取りにより異なりますが、通常1~3本設置され宅内のどこかに隠されております。 これは「共用部分である排水立て管は、専有部分である住戸の中に設置されている」ということになります。
排水管は、管内の詰まりや汚れを除去するために、管内を定期的に清掃する必要があります。
本当に管内清掃なんて必要なのですか? と聞かれることがよくありますが、写真2は40年以上管内清掃を行わなかった末路で、ある日突然、汚物が吹き出し1週間ほど排水が一切流せなくなったので仮住まいを強いられたそうです。 表2は排水管の清掃方法と清掃周期の例です。 表3に示すように、マンションの排水管に使用されている管材は多くの種類があります。 その選定は新築時のマンション販売業者(開発業者)や設計者の考え方により様々ですが、1種類に固定されておらず複数の種類が使い分けられていることが多くなっています。 自分のマンションにどの種類がどの範囲で使われているかを知るには、竣工図面を読み解けば分かります。 しかし高経年のマンションにおいては、専門家でも竣工図面だけでは解らない場合が少なくありませんので、そのような場合は専有部分のリフォーム工事で内装が無くなった状態を内覧させてもらい、現場を目視確認したり実際の排水管の中に内視鏡を挿入して確認したりします。
管材が異なれば当然に寿命も異なる訳ですが、大雑把に言えば金属製の管材は腐食により改修工事が必要になってきますので、長期修繕計画において改修工事を予定することになります。
表3において特筆すべきは、排水用鋳鉄管は耐久性が極めて高いと考えられてきましたが、やはり更新が必要という時代に突人したようで、近年になり更新工事の事例が増えてきました(写真3)。

換気設備

一般的なマンションの換気方式は、第3種換気と呼ばれる方法が採用されています。 これは、換気扇により汚れた空気を機械的に強制排気し、その分の給気は室内が負圧になることで給気口から自然に新鮮な空気が入ってくるという仕組みです。 換気扇は台所に1台と、浴室とトイレに各1台というケースがありますが、これも様々です。
最近、惑染対策を行っているお店などで、「店内の空気はおよそ何分で入れ替わる仕組みになっております。」というアナウンスをよく耳にするようになりました。
少し専門的になりますが、「換気回数」について紹介しますと、室内に給気または排気される空気の量(面/時)を、部屋の容積(面)で割ったもので1時間に何回空気が入れ替わるかを示すものです。 2003年以降に新築された住宅の居室(寝室や居間)の場合は0.5回/時以上とされており、これは1時間で半分以上の空気を入れ替えるということです。 この方法の具体例としては、浴室の天井についている換気扇をスイッチOFFの時でも常時微鼠の運転状態を継続させる機能により、各居室に設置されている給気口から新鮮空気が少しずつ人ってくるという仕組みのものがあります。 ところが、何らかの理由でこの給気口を常時閉じて住まわれているというケースをよく見かけてしまうのが実態ではあります。

設備には寿命がある

マンションを大切に使っていけば「100年は十分に使える」と言える時代になりました。 しかし、残念ながら設備そのものは絶対に100年は持ちません。
「住まい」を安心安全・快適に末永く使っていくために、パーツの1つである設備は、いずれ「総入替え」をする時がやってきます。 「建物を大切に使う」とは、大変ですが「パーツ」を人れ替えることを指します。 ヴィンテージマンションという言葉を耳にするようになりましたが、建物外観はレトロであったとしても、内部の設備水準までもが陳腐化していては、なかなか安心安全な住まいとは言えないと思います。
設備の維持管理にはどうしても費用がかかるものですが、自分のマンションの特性を正しく理解し、少し先のことを考えた上で総合的な判断をしていくことが、結果として管理費や修繕積立金の節約になると思っています。