マンション管理の基礎知識

マンションの主な修繕工事について

マンションの主な修繕工事について

マンションの主な修繕工事とは

マンションの主な修繕工事とは、大きく分けて躯体改修、防水改修、外壁仕上げの改修、設備改修の4つのことを言います。

なお、今回は設備改修を除く3つについて説明します。

コンクリート製の構造躯体は、経年によりアルカリの成分が表層から徐々に失われ、中性化が進行します。

またひび割れなどから水が侵入すれば内部の鉄筋が腐食して膨張し、コンクリートを破壊する「爆裂」という現象が起きます。

これらが起こらないように、水の浸透を防ぐ目的で外壁には塗装やタイルが施工されており、屋上やバルコニーには「面防水」、打継ぎ目地などには「線防水」が施工されています。建物を長く使い続けるためには、コンクリートの構造躯体の劣化を食い止めることが何より重要で、そのために外装の仕上げや防水を改修することが必要なのです。

躯体改修について

鉄筋爆裂と改修方法

コンクリートの躯体は、乾燥収縮によるひび割れ、外力(地震など)によるひび割れ、手すりなど金物を埋め込んだ根元の取合い部分などからの水の侵入が躯体劣化につながります。

ひび割れから躯体内部に侵入した水により、最初に現れるのが「白華現象(エフロレッセンス)」で、コンクリート内部のカルシウム成分が水によって溶け出し、白い結晶が表出します。これが進行し、侵入した水が鉄筋に触れることで鉄筋が腐食して膨張し、コンクリートを押し出して内部から破壊します。

これをコンクリート内の鉄筋の発錆による躯体欠損、通称「鉄筋爆裂」と言います。

調査の段階で、これらの劣化が見える範囲でどのくらいあるかを確認し、経験則などから全体の数量を想定して補修費用を積算します。

躯体改修は大規模修繕工事の最初に行うもので、足場を仮設したらまず全体を調査して、補修の数量を正確に把握することから始めます。

ひび割れは0.3mm以下のものであればフィラー処理※ 1を、それ以上であれば状態に応じてUカットシールエ法※2やエポキシ樹脂注入工法※ 3などで改修します。爆裂などによる欠損は、錆びた鉄筋周辺の躯体を研(はつ)り、鉄筋の錆を落とし、中性化抑止剤を塗布し、ポリマーセメントモルタルなどで整形して補修を行います。

防水改修について

防水の種類

面防水の建材としては、「アスファルト防水」、「シート防水」、「塗膜防水」の3つに大別できます。

また、廊下やバルコニーは簡易な「モルタル防水」、「塗膜防水」、シートと塗膜の両方を使う「複合防水」など施工方法も多岐にわたっているのが現状です。

新築時のこの甚本的な防水工法を知ることが、大規模修繕時にどのようなことを行えばいいかのポイントになります。

屋上防水には主に、「保護アスファルト防水」か「露出アスファルト防水」が施工されています。

アスファルト防水は歴史も古く、コンクリートの建築物に最も適した防水工法であると同時に、最も信頼性が高くかつ耐用年数も長いのが特徴です。

改修方法

第1回目の大規模修繕時には、露出アスファルト防水では、一部に膨れが出来ている程度で漏水も見られなければ、部分補修で対応が可能です。

パソチ補修や、立ち上がり端末のアルミアングルで固定してある部分のアスファルトコーチングの打ち増し、防水層を保護するための保護塗装などが考えられます。

保護アスファルト防水で、立ち上がり端部が保護コンクリートの熱伸縮により破断しているような場合でも、部分補修は可能です。そもそもこれは新築時の保護コンクリートの施工不良に起因する防水層の破断で、経年劣化でない可能性も考えられます。

部分補修方法としては、パラペットいから60センチ分程度の保護コンクリートを祈(はつ)り取り、アスファルト防水層を増し張りして健全な状態とし、露出部分に保護塗装をかけるか、置き敷きのブロックを敷設して保護することで、新築同等の防水性能が回復できます。

被せ工法

露出アスファルト防水でも既存の状態が悪く漏水が頻発しており、原因の特定もままならないようなら、「被せ工法」を検討します。被せ工法でも同じアスファルトシートを上から1層増し張りする工法や、シート防水機械式固定工法などを検討します。どちらにしても、既存の防水層の部分補修を行うところから始め、適切な下地を作ってから被せることが重要です。

シート防水機械式固定工法

ディスクと呼ばれる金物を、既存の防水層に穴をあけて躯体に固定し、その上に塩ビシートを敷き込み、ディスクとシートを密着させて固定する、もしくはシートを敷き込んだその上からディスクを躯体に固定し、ディスク部分を上から別なシートを貼付けて施行する防水工法です。

シートとシートのジョイントも圧着し、既存の防水層を全て新たな防水層で覆ってしまうので健全な状態となりますので、選択肢として検討してもいいでしょう。

ウレタン塗膜防水通気緩衝工法

新築時の防水が保護アスファルト防水である場合には、前述のシート防水機械式固定工法以外に、ウレタン塗膜防水通気緩衝工法が候補となります。

ウレタン塗膜防水通気緩衝工法は下地の処理、特に立ち上がり露出部分の処理が必要です。既存の立ち上がりが隠蔽されている場合はそのまま上にウレタン塗膜を施工することが可能ですが、露出の場合は当該部分のアスファルト防水層を裁ち落とすか、モルタルなどで埋めるか、パネルなどで隠蔽した上で塗膜の施工をする必要があります。

ウレタン塗膜は適切な厚みを確保することが重要ですので、基本的にはウレタン主剤を2度塗りして膜厚を確保します。

パラペット部分や基礎架台周りなどの立ち上がり部分では、塗膜が垂れて流れることが無いように、補強メッシュシートを入れて適切な膜厚を確保します。膜厚は、膜厚測定器などで必要量が確保できているかどうかを確認します。

最後にトップコートを抱ってウレタン主剤を保護して完了です。トップコートにはアクリルウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系の3種類があります。フッ索系は耐候性が高いので、一般に長持ちすると言われていますが、費用もやや高額になります。

ウレタン塗膜の主膜が劣化や摩耗により、所定の膜厚が確保できなくなったら新たに主剤を塗り直して膜厚を確保しますが、主剤も2回塗り重ねると面当たりの荷重も増大しますので、3回目の塗重ねを検討するような時期になったら、塗膜を全撤去して再度塗膜防水層を形成するか、既存の防水そのものの撤去全更新とするかを検討しましょう。

線防水(シーリング)

躯体打継ぎ目地や金物と躯体の取合いなどには線防水と呼ばれる、主にシーリング材による止水が施工されています。

シーリングには、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、変性シリコン系などがあり、塗装目地と露出目地の違い、躯体の取合い、躯体と金属などの取合い、動く目地(ワーキングジョイント)か動かない目地(ノンワーキングジョイント)かなどの部位によって、使われる材料が異なります。

改修においても、部位ごとに適切な材料を使用する必要があるので、材料選定には注意が必要です。

シーリング材はこれまで紫外線劣化を起こしやすいことから、その劣化の状態で大規模修繕工事の時期の目安となる12年周期の根拠とされてきましたが、近年では変性シリコン系でも15年程度は十分に止水性能を維持できている事例が見られます。

またシリル化アクリレート系シーリングや高耐久変性シリコン系シーリングは、大規模修繕工事を18年周期にすることが可能な新建材として注目されています。

改修の際には、既存のシーリングをできるだけ丁寧に撤去後、プライマー※ 5を塗布し、新たなシーリング材を施工するという手順になります。

外装仕上げの改修について

外装仕上げは主に2種類、塗装仕上げとタイル貼り仕上げがあります。

どちらも美装のためだけではなく、躯体を水や二酸化炭素などのコンクリートの劣化要因と言われるものから保護することが目的で施工されています。

塗装仕上げ塗装の場合は、既存の墜膜の状態が健全であれば塗重ねが可能ですので、事前調査で塗膜の付着強度試験や成分分析などを行って、最適な塗装材料を選定します。

その上で、健全な下地を作るために躯体を改修し、全体を洗浄した上、選定した仕様に合わせて塗装します。一般には外壁塗装の下塗りの1種で微弾性フィーラーと呼ばれる「可とう形改修用仕上塗材(主材)」の上に色彩選択の自由度が高いトップコート※ 6と呼ばれる上塗り材を塗布して仕上げることが多くなっています。

トップコートはアクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素系などの種類があり、後者ほど耐久性が高く、価格も高額となります。

シンナーで希釈する溶剤系と、水で希釈する水性系のものがありますが、近年は環境への配慮などから水性系を選定するケースが主流です。

塗装のいいところは、色を変更するだけで建物全体のイメージを変えることができるところにあります。

築古のマンションでは、アクセントカラーを人れたり、石目調のシート建材を併用したりと色々な検討が可能です。外壁色の変更を検討する際は、事前にイメージパースを作成し、居住者の意見聴取も行って、総会で特別多数決議を得る必要がありますが、雰囲気が一新されます。外観の色に関しては、地元自治体の景観条例などが定められている場合もあり、採用できる色調や明度、彩度に制限が設けられています。事前に自治体との協議・届出が必要な場合もあります。

タイル貼り

外壁タイルは陶磁器製品であることから、耐候性、耐水性、耐火性に優れた材料です。

耐久性や意匠性に優れるタイルですが、剥がれて落下すれば重大な事故につながる恐れもあることから、適切に躯体に貼り付けられているかどうかの確認が求められますし、メンテナンスも重要です。

タイルは、コンクリート躯体や下地モルタル層に、貼付け用のモルタルで貼り付けられていますが、日射などによる膨張と収縮の繰り返し応力や、地震などの外力の影響を要因として、経年に伴いタイルに浮きやひび割れ、剥落といった不具合が生じます。場合によっては施工上の不良(注いが原因で、こうした不具合が発生することもありますので、注意が必要です。

浮きなどは打診棒と呼ばれる調杏器具で、タイルを叩いてその打音で判定することが可能です。

事前に浮きの箇所数を全数把握することは困難なため、手が届く範囲での調壺から想定数鼠を算出して実数精算工事としておき、足場仮設ができた段階で早急に全数の打診検査で正確な数量を把握することが必要です。近年では赤外線写真によるタイル浮き調査なども実用化されていますが、実際にはまだ正確性に欠けるところがあるようで、参考程度と考えておいた方がいいかもしれません。

改修方法

浮きの直し方は主に3種類で、タイルを剥がして張り替える「張替え工法」、エポキシ樹脂などの接着剤と金属製のピンを併用して浮きを固定する「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法口」、繊維ネットとアンカーピンによりタイルの上に補強層を構築する「外壁複合改修工法」、一般に「ピンネット工法」と言われるエ法があります。

張替え工法と注入工法は既存の外壁がそのまま残りますが、ピンネット工法では新たな補強層の上に改めてタイルを貼ったり、また塗装で仕上げたり、近年では外壁用のシート建材を貼り付けるなど、デザインの自由度が高くなります。

なお、ピンネット工法にはアンカーピンを一定数打った上で、透明度の高いクリアのウレタン樹脂で覆層を形成し、既存タイルの色合いなどはそのまま生かせるエ法もあります。

近年のマンションでは、タイルが弾性の接着剤で貼り付けられているものが増えており、貼付けモルタルと違い、膨張収縮の繰り返し応力や外力を接着剤の弾性が吸収しますので、浮きが発生しないと言われています。

今後、弾性接着剤使用のタイル貼りマンションが改修の時期になった際に、どのような性状を示すか、注目されるところです。

また超高層マンションなど高強度コンクリート使用の「プレキャスト先付けタイル※ 8」の場合も、浮きや剥藩の事例はありますが、改修工法が確立しておらず、改修設計者がそれぞれに工夫をして改修しているのが実情です。

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