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管理費等の使い込み事件

 

管理費等の使い込み事件 あなたのマンション大丈夫?

事例1 会計理事が監事を兼任

リゾート地の自主管理Aマンション(RC造5階建て、54戸)で、居住者は2割足らずで、役員のなり手もなく数年間同じ人が同じ業務についていました。

最初、Aマンションの理事長から管理規約改正の相談を受けた際、管理規約は会計理事と監事が兼任となっていました。

臨時総会を開き管理規約を改正し、新役員と監事を別々に選任しました。

その後通常総会まで2ヶ月となった頃、会計理事Bから使い込みの告白があったと、C理事長から、銀行業務の経験のある私に金銭の精査など実態調査の依頼がありました。

Bは、最初の数ヶ月は管理費10万円位を個人事業へ流用し、月末に管理組合通帳にその額を戻していましたが、その後額が100万円単位、預金通帳ヘの返済も期末となり、3年経った頃最終的には1,000万円を超える額となり、預金通帳は無くしたと言う始末です。結局私的に流用した金銭は弁済されず、銀行の残高証明写しも偽造と判明しました。

対応

そこで緊急理事会で私への調査依頼を決定し、段ボール3箱分の帳票類等が私宛に送られてきました。

そこで調べてみると古い通帳が無いので役員が銀行に事情を説明し、3年分の預金の出入り照会を請求することから始めました。

預金の出入りを、元帳、請求書、領収書等と照合するも、とても総会には間に合いません。

何せ領収書が不揃いで、使途不明金の精査に手間取り、精々使途不明金をリストアップし概要を掴むことが精一杯です。

決算書の補正までは無理なので、通常総会では調査の途中経過と概要を報告するだけにしました。

総会にはBも出席し謝罪しましたが、会場は罵声の嵐です。

最終的な使途不明金・使い込み額は1,000万円超に及び、これを当人も認め、B所有の不動産を処分して全額を一括弁済しました。

通常総会から3~4ヶ月後に臨時総会を開催し、細かい不明額もありましたが、概算は確定し決算の補正について承認を得ました。

途中、民事・刑事等の議論もされましたが、Bの謝罪と新しい管理体制、管理運営の反省等で幕引きとなりました。

事例 2 管理員の使い込み

十数年前のDマンション(SRC造14階建て、55戸)での事例です。

管理会社Eは、所有する部屋に管理員Fを住まわせていました。

Fは丁寧な清掃で人当たりも良く、住人には慕われていましたが、E社は小規模な無登録業者で、杜撰な会計処理で、決算時の繰越金が前年度と合わなく、決算処理方法も会計原則とかけ離れているとか、帳票類の不備・不足が多く予算管理もなされてない状況でした。

ところが、D管理組合はFに出納業務を任せたところ、Fは管理組合のおカネだけでなく、専有部分のリフォームも知り合いが安く施工すると依頼者に持ちかけ、実費との差額や中間マージンを着服していました。

被害額が700万円余りの詐欺として、刑事事件にもなりました。

対応

顧問を受けたきっかけは、大規模修繕工事に際して資金繰りなどを見ると杜撰な会計処理で、Fの使い込みが発覚したことからでした。

当初、Dの区分所有者は誰も不正には気付いてなく、会計資料は殆ど無く、月次報告もありませんでした。

早速、過去2年分の収支を調べ、会計書式も大幅に修正する作業から始めました。

E社の担当者に会計処理方法を教えながらの聞き込みです。

そして修正した決算書を作り、臨時総会にて経緯説明の上で承認された次第です。

次の定時総会までに、管理会社の変更、大規模修繕工事の準備を行う等、多くの頻度で理事会や、ヒアリング業務を続けました。使い込み事件についてはE社の責任も追及し損害賠償請求事件として弁護士を通じて訴訟をしましたが、D組合側の不十分な管理体制もあり、被害額の約1/ 3は管理組合側の損金とされました。

専有部分のリフォームに関わる個人の損害分については、当事者は恥ずかしさから新聞等で表沙汰になることを躊躇し、刑事事件として認められるには月日を要しました。

事例 3 管理組合役員の杜撰な会計処理

築20年を超える小規模なGマンション(RC造8階建て、14戸)では、建物を設計した業者が建築当初より管理していましたが、マンション管理適正化法の施行に伴い撤退し、自主管理となっていました。管理運営の方法について区分所有者の誰もが知らず、また無関心で理事長も名ばかりでした。

そのため10年余り総会・理事会は開かれず、管理費等の長期滞納者も数人いるような状況でした。

あるとき区分所有者Hが管理不全状態にあることに気付き、Hが理事長代行となり会計処理をすることになりました。

しかしHも会計処理方法を知らず、帳票類もほとんど残っていません。作成した決算書は収支だけで、内容もドンブリ勘定、支払いは個人のクレジットカード、私物購入と管理組合費用との区別も曖昧な状況です。

数年間この状態が続いた結果、資金も底を尽き諸設備の改修工事もできません。

管理会社に委託しようと何社かを訪ねたようですが、どこにも受け入れられず私の所に相談に来ました。

このときは、修繕積立金も設定されてなく、管理費(預金)総額300万円弱と資金脆弱で、別途長期の大口滞納が2件で460万円もあり、築23年で大規模修繕はもちろん設備の補修工事は一度もできていない状況が続いていました。

対応

顧問となり、先ずマンション管理正常化準備委員会のメンバーを募集し、マンション管理の基本と会計処理の手法などを月2回位3ヶ月にわたり説明しました。

会計報告は過去の確認資料が乏しく、概算ですが一応会計原則に従った方式に修正しました。

その後臨時総会を開催し、新役員の選任や過去の経緯をまとめた業務報告書、管理規約の改正ほか、今後の改善計画を議案として諮りました。

数年間会計処理に携わったHの私的流用数十万円については、Hは役員手当だと主張しました。

総会決議を経ていないと否認し、クレジット会社の資料からある程度の私的支出額を確定しました。

しかし、この責任は無関心であった区分所有者全員にあることを考慮し、正常化準備委員の判断により一定額について弁済を求め回収しました。

教訓と対策

共通することは、区分所有者の無関心と、自分のマンションは大丈夫といった思い込みが根底にあります。

また、担当者任せはダメ、関心を持つことを訴えても、何をしたら良いか分からない人が多くいます。

こうしたことから適切な管理運営が行われなければ、会計処理の不正が発生したり、滞納者が増え長期化すれば滞納額も多額になったりして、管理不全マンションにも繋がります。これらの問題を解決するには相当な時間がかかることを認識し、下記の点を心掛けながら、自らの責任において行うことを自覚して、マンションの管理運営に当たることが肝心です。

チェックポイント10項目

①月次収支報告書をよくチェックする

②理事会では会計報告を必ず行う

③決算書は前年比、繰越金、曹式を見る

④総会の出席率は関心の高さを表す

⑤会計監査は抜き打ち的に厳正に行う

⑥支払い方法のルールを決めておく

⑦預金通帳と印鑑は別人が保管する

⑧通帳の動きをよく見る

⑨管理会社の支払い承認には複数人が立会う

⑩利益相反行為に注意

 

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