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区分所有法⑤-区分所有建物の復旧・建替え

 

第5節 区分所有建物の復旧・建替え

① 復旧(61条)

「復旧」とは、戚失部分を原状(滅失前の状態)に回復するという意味である。

専有部分・共用部分によって、次のように分類できる。

「復旧」と「変更」とは別であり、「変更」とは、滅失前と別の状態にすることである。

復旧

1.専有部分

各自で直して負担する。
※ 共用部分の復旧・建替えについての集会の決議が専有部分の復旧にわたる楊合でも、その決議に賛成した区分所有者のみが専有部分の復旧について拘束を受ける。

2.共用部分

(1)小規模滅失(61条1項)

建物価格の1/2以下の滅失

「基準」

一部滅失の時点において、その滅失程度が「滅失前の状態における建物全体の価格」と「一部滅失後の状態における建物全体の価格」とを比較し、後者が前者の1/2を上回まわる。

【例】

(前)10億円 →滅失→ (後)5億円を上回まわる

原則 ① 各区分所有者は、各自で治すことができる。
※ たとえば、専有部分と共有部分がどのような比率で滅失したかは問わない。
② ①により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に、復旧に要した金額を共用部分の持分の割合に応じて償還請求できる(同2項)。
※ 規約で「償還請求権を認めない
③ 上記②の場合、裁判所は、償還請求を受けた区分所有者の請求により、償還金の支払い時期につき、相当の期限を許与できる(同13条)。

※ 小規模の場合に限られる。

なぜなら、1/2を超える滅失の場合、復旧に多額の費用がかかり、共用部分を復旧するか否かは、個別判断ではなく集会での特別な判断に委ねるべきだからである。

例外

次の場合は、各自で直すことはできない。

① 復旧の決議(普通決議)をした場合
② 建替え決議をした場合
③ 団地内の建物の一括建替え決議をした場合

(2)大規模滅失(同5項)

【例】

建物の価格が、滅失前10億円が滅失後5億円未満になった。

共用部分については、各自で直すことは認められず、復旧の決議(特別決謙)で復旧できる。

この際の集会の議事録には、その決識についての各区分所有者の賛否をも記載し、または記録しなければならない(同6項)。

※ 議事録には、議事の経過の要領・その結果を記載する(42条)。

ここでは、特別記載事項として、各区分所有者の賛否を記載する。

つまり、下記「3.買取請求」における その請求権の主体と相手方を明確にするためである。

コメント

①(1)と(2)を「建物の価格」を基準に分けているので、どちらか判断できない場合もある。

たとえば、建物の物理的滅失部分は1/2以下でも、滅失程度が建物価格の1/2超が考えられる。

費用と時間があれば、不動産鑑定士に依頼する方法もあるが、簡易判定マニュアル (日本不動産鑑定協会カウンセラ一部会)によることもある。

たとえば、「一部滅失前の状態における建物全体の価格」とは、建物の再調達価格から経年減価を差し引いた額とし、「滅失した部分の価格」とは、復1日に必要な補修費用の見積額によるが、後者が前者の1/2以下であれば、小規模滅失、1/2超であれば、大規模滅失と考えるのである。

②(1)において、「復1日・建替え決議が否決または復1日しない旨の決議がされた場合の扱い」

 各区分所有者は、個別に共用部分の復1. 日工事ができるのだろうか。

 建替え決議案が否決された場合はできるが、 復1日決議が否決された場合は、 原 則としてできないと考えられている。

3.買取請求

(1)買取指定者なしの場合

① 大規模滅失の復旧の決議があった場合、その決議の日から2週間を経過したときは、決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下「決議賛成者」という) 以外の区分所有者は、決議賛成者の全部または一部に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買取請求できる(同7項前段)。

コメント

③ たとえ少数派であっても、区分所有関係から離脱し、復旧に要する費用を負担 しなくてよい自由を認めるべきだからである

② この場合、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から2ヵ月以内に、他の決議賛成者の全部または一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した各共有者の持分割合に応じて、当該建物およびその敷地に関する権利を時価で買取請求できる(同7項後段)。

(2) 買取指定者ありの場合

① 大規模滅失の復旧の決議の日から2週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物およびその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下「買取指定者」という)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、建物およびその敷地に関する権利を時価で買取請求できる(同8項)。

② 買取指定者が買取請求に応じた売買代金俵務の全部または一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となったものを除く。以下同じ)は、連帯してその債務の全部または一部の弁済の責めに任ずる。

ただし、決議贄成者が買取指定者に査力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない(同9項)。

(3)大規模滅失復旧決議の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、4ヵ月以上の期間を定めて、買取請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告できる(同10項) 。

この催告を受けた区分所有者は、催告時に定められた期間を経過したときは、買取請求できない(同11項) 。

(4) 建物の価格の1/2を超える滅失があったときは、その滅失した日から6ヵ月以内町こ大規模滅失の復旧決議、建替え決議、団地内の建物の一括建替え決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者(管理組合ではない)に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買取請求できる(同12項)。

※ 後述する被災区分所有法では、「政令の施行の日から起算して1年以内に」としている。

(5) 裁判所は、上記(1)(2)(4) により、償遠もしくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者または(2)②の債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金または代金の支払いにつき、相当の期限を許与できる(同13項) 。

② 建替え(62条・63条)

「建替え」とは、建物を取り壊して再建するという意味であるから、建物が現に存在していることが前提となる。建物が全部滅失している場合には、建替えに関する規定は適用されない。

1. 建替え決議

(1)要件(62条)

集会においては、区分所有者および議決権の各4/5以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、① 当該建物の敷地、② その一部の土地、③当該建物の敷地の全部の土地、④一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という)ができる(同1項)。

なお、集会の識事録には、その決誂についての各区分所有者の賛否をも記載または記録しなければならない(同8項、61条6項) 。

新たな再建建物の敷地が、従前建物の敷地と一部でも重なっている土地であれば、建替えができる。

建替え決議

甲マンション(同一床面積の13の専有部分からなり、Aが5戸、Bが3戸、Cが2戸、D・E・Fが各1戸を所有し、規約において、各専有部分は一の議決権を有するものとされている)の建替えについて、ABCDEFが賛成した場合、その建替え決議はできるのであろうか(建替えに係るその他の要件は満たしているものとする) 。

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 建替え決識ができるのは、区分所有者および議決権の各4/5以上の多数の賛成がある場合である。

そこで、区分所有者の4/5と議決権の4/5を、それぞれ計算により求める。

まず区分所有者は、ABCDEFの6人であるから、区分所有者の4/5は、6(人)× 4/5=24/5=4.8(人)である。

次に、議決権は、Aが5、Bが3、Cが2、D・E・Fがそれぞれlずつ有するから、議決権総数は13である。

議決権の4/5は、13×4/5=52/5=10.4である。

したがって、建替え決議ができるのは、区分所有者の5人以上および議決権の11以上の賛成がある場合である。

ABCDEが賛成した場合は、

・区分所有者数 5

・議決権数(5+3+2+1+1)=12

となる。

以上により、このケースの場合、建替え決議ができる。

(2)定める事項(62条2項)

① 新たに建築する建物(再建建物)の設計の概要

具体的に、その設計の概要を示す必要がある。

建築費用の算定・区分所有権の帰属に関する事項の決定をする。

② 建物の取壊しおよび再建建物の建築に要する費用の概算額

建替え決賊時点での見梢額の総額をいう。

③ ②の費用の分担に関する事項

区分所有者となる者が、建替えの費用をどのように分担するかについて定める。

分担額そのものを示さなくてもよいが、骰用分担方法や基準は明示する。

④ 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項

①で示される各尊有部分が誰に帰属するか、帰属の結果、その対価をどのように梢符するかについて、その決定の仕方、基準を定める。

(3) 建替え決識を会議の目的とする集会を招集するときは、集会の招集の通知は、集会の会日より少なくとも2ヵ月前に発しなければならない。

ただし、この期間は規約で伸長できる(62条4項) 。

(4)建替え決議を会議の「l的とする集会の招集通知には、議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない(62条5項) 。

① 建替えを必要とする理由

② 建物の建替えをしない場合における当該建物の効用の維持・回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む) をするのに要する費用の額・その内訳

③ 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容

④ 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

(5) 建替え決議を会議の目的とする集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも1ヵ月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない(62条6項) 。

(6)この説明会の開催については、集会の招集通知に関する規定、区分所有者全員の同意があるときの招集手続の省略の規定が準用される。

ただし、招集通知は、去日より少なくとも1週間前に発するのが原則であり、規約で伸長できるが、短縮できない(62条7項)。

(7)決議後の規定(63条)

① 集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかった区分所有者(その承継人を含む)に対し、建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告する(同1項)。

催告日から2ヵ月以内に回答しなかった区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなされる(同2項・3項) 。

② 売り渡し請求(同4項)

請求できる者

・建替え決議に賛成した各区分所有者(承継人も含む)

・建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(承継人も含む)請求できる者

・買受指定者

※ この者に、建替え不参加者に対する区分所有権および敷地利用権の売渡し請求事務を行わせる。

一般に建替え事業に参加するデベロッパー。

請求される者

建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む)

※ 包括承継人・特定承継人の双方が含まれる。

建替え決議があった後に、(この区分所布者から敷地利用権のみを収得した者(その承継人を含む))(区分所有者でない敷地利用権者)の敷地利用権に請求される者ついても、同様である。

つまり、この者は区分所有者でないため、集会で行った建替え決議に拘束されず、この者に対する売り渡し請求権を行使できなくなることも考えられる。

そこで、建替え決議後に建替え不参加者の区分所有者が敷地利用権のみ譲渡した場合、譲受人(承継人)に対し、敷地利用権の売渡し請求ができる。

不参加者による売り渡し請求の妨害を防止するためである。

期間

建替えに参加するか否かの催告の回答期間満了日から2ヵ月以内(2ヵ月経過後2ヵ月以内)

請求内容

区分所有権および敷地利用権を時価※で売渡し請求できる。

※ 「売渡し請求権の行使当時における客観的取引時価」をいう。

この「時価」や「マンションの明渡し・移転登記」について争いがあれば、最終的には民事訴訟により解決することになる。

建替え決議

③ 明け渡し期限の許与(同5項)

状況

「建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生じるおそれがあり」、かつ、「建替え決誂の遂行に、はなはだしい影聾を及ぼさない」と認めるべき顕著な事由があるとき

※つまり、即時明渡しの強制により、現実の利益が著しく損なわれる恐れを考慇して、期限を許与できる制度である。

たとえば、麻齢者や病弱者を想定している。

請求できる者

建替えに参加しない旨を回答した区分所有者

(売渡し請求の相手となった区分所有者)
※ 包括承継人は含まれるが、特定承継人は含まれない

請求先

裁判所

措置の内容

代金(当事者の協議による)の支払いまたは提供の日から1年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき「相当の期措置の内容限」を許与できる。

※1 代金受領を拒否される場合を想定した表現である。

※2 明渡し義務者は、この期限まで使用を継続しながら移転先を探すことになる。

明け渡し期限の許与

④ 再売渡し請求(同6項)

状況

「正当な理由」がないにもかかわらず、建替え決議の日から2年以内に「建物の取壊しの工事に着手」しないとき

(つまり、売渡し請求権を行使して不参加者の区分所有権等を強状況制的に買い取ったまま建替えの実行に着手しない状況にあるときのこと)

※1 ③の期限経過後も、明渡しを直ちに求めることが適切でない建替え不参加者がいる場合等

※2 取壊しの現実の作業に箔手することをさす。

請求できる者

売渡し請求権を行使され、区分所有権または敷地利用権を売り渡した者

請求される者

区分所有権または敷地利用権を現在有する者

※ 売渡し請求権を行使した者が譲渡したときは、その「譲受人」となる。

期間

建替え決議の日から2年の期間満了日から6ヵ月以内

方法

買主(建替え参加者等)が支払った代金に相当する金銭を提供する。

※ 代金受領後の利息は計算しない。

請求内容

売り渡した区分所有権およぴ敷地利用権を売渡し請求できる。

ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかったことにつき、「正当な理由」があるときは、請求できない。

再売渡し請求

あくまでも、取壊し工事未着手のまま2年経過の場合に限り認められるものであり、次の場合は要件に合致しない。

・取り壊し後、敷地が第三者に売却され、建替えができなくなった場合

⇒ 建替え不参加者は、この規定による再売渡し請求に基づき、敷地利用権を取り戻せない。

・取壊し後、再建建物が何ら建築されず、2 年を経過した場合

⇒ 建替え不参加者は、この規定による再売渡し請求に基づき、敷地利用権を取り戻せない。

⑤ 建物の取壊しの工事に着手しなかったことにつき「正当事由がある場合」において、建物の取壊し工事の着手を妨げる理由がなくなった日から6ヵ月以内にその着手をしないときは、再売渡しの請求ができる。

この場合、区分所有権または敷地利用権を売り渡した者は、建物の取壊しのエ事の着手を妨げる理由がなくなったことを「知った日から6ヵ月」または「その理由がなくなった日から2年」のいずれか早い時期までに、買主が支払った代金に相当する金銭をその区分所有権または敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求できる(同7項) 。

 

(8)建替えに関する合意(64条)

次の者およびその承継人は、建替えを行う旨の合意をしたものとみなされる。

① 建替え決議に賛成した各区分所有者

② 建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者

③ 区分所有権または敷地利用権を買い受けた各買受指定者

復旧・建替え決議

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