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専有部分の「シェアハウス」使用禁止を認めた事例

 

 

専有部分の「シェアハウス」使用禁止を認めた事例

事案の概要

原告は、東京都豊島区にあるマンション(以下、「本件マンション」といいます。)の管理組合法人(以下、「X管理組合法人」といいます。)です。

被告Ylは、本件マンションの2つの専有部分(以下、「本件専有部分」といいます。63.50面と63.81面の2室。)の区分所有権を有する者です。

平成26年4月30日、Ylは、Y2に対し、本件専有部分を賃貸し、平成29年4月賃貸借契約を更新しました。

x管理組合法人の管理規約(以下、「本件管理規約」といいます。)12条は、専有部分の用途について、区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない旨定めていましたが、シェアハウスとしての使用を禁止する旨の規定は置いていませんでした。

そこで、平成29年5月14日実施のX管理組合法人の総会(以下、「本件総会」といいます。)において、本件管理規約12条に次の規定を追加する旨の議案を上程し、全会一致で可決されました(以下、「本件改正」といいま。)。

【本件改正後の管理規約第12条]

2 区分所有者は、専有部分を、直接・間接を問わず、別紙2で定めるところの「シェアハウス」に供してはならない。

3 理事長は、専有部分がシェアハウスに供されていると認めたときは、当該専有部分の区分所有者に、専有部分をシェアハウスに供することを中止することを請求することができる。(以下、略)

〔別紙2〕

「シェアハウス」とは、専有部分の全部または一部(以下、単に「専有部分」という。)の利用形態が、以下に掲げる各項のいずれかに該当する場合における当該専有部分の長期・短期の利用様式をいう。

(1)専有部分の居室(キッチン、トイレ及び風呂を除く。以下本項にて同様。)の数(以下「室数Jという。)を超える数の者(区分所有者、区分所有者の親朕、区分所有者からの賃借人、上記賃借人の親族(以下あわせて「縁故者」という。)を除く。)による継続的な居住、宿泊または滞在。

(2)室数を超えない数の不特定の者(縁故者以外の者でいずれの縁故者も常時かつ明確に住所、氏名及び職業(就業就学先を含む。)を把握していない者をいう。)による居住または宿泊。

(3)縁故者を含む複数の者による居住、宿泊または滞在で、直接・間接を問わず、複数の者から居住、宿泊または滞在の対価を徴収することを予定しているもの。

(4)前各号のためにする改築・改装

本件総会には、Ylの代理人が出席し、本件改江に賛成しました。

Y2は、平成29年7月から9月までの間に本件専有部分のリフォーム工事を実施し、ネパール人17名、中国人2名、フィリピン人2名を居住させていました(以下、「本件行為」といいます。)。

X管理組合法人の理事長は、Y2による本件行為が、本件改正後の管理規約12条2項に違反するとして、その改善を勧告しましたが改善がみられなかったので、平成30年5月26日開催の総会において、区分所有法57条に基づき本件行為
の停止を求める訴訟を提起する旨の決議をし、本件訴訟を提起しました。

裁判所の判断

(1)主文

1. 被告Ylは、本件専有部分について、いずれも、直接・間接を間わず、別紙2に定めるところの「シェアハウス」に供してはならない。

2.(略)

3.被告Y2は、本件専有部分について、いずれも、直接・間接を間わず、別紙2に定めるところの「シェアハウス」に供してはならない。

(3)判決の理由

本判決では、次の理由を挙げています。

①特別の影響と被告Y1の承諾についてYlの代理人が、本件総会において本件改正に賛成しているので、Ylは、区分所有法31条l項の承諾をしたものと認めました。

②本件行為は共同の利益に反する行為に当たるかについて「原古は、本件改正後の本件管理規約12条2項が、①本件マンションのセキュリティーを保全・確保すること、②犯罪などの不安要因・不確定要素を排除すること、③豊島区マンション管理推進条例(平成24年12月21日条例第39号)で義務付けられている居住者名簿の作成を可能とすることを目的とするものであると主張するところ、上記各目的のために、専有部分を、直接・間接を問わず、別紙2で定めるところの『シェアハウス』に供することを禁止することは、高度な必要性及び合理性があるとはいえないものの、一定の必要性及び合理性があるものと認められる。

したがって、本件改正後の本件管理規約12条2項に違反する行為は、法6条1項に規定する『建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為』に当たるものといえる。

そして、本件行為は、本件改正後の本件管理規約12条2項に違反する・・・。

以上によれば、本件行為は、法6条1項に規定する『建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為』に当たるというべきである。」

解説

(1)専有部分の用途規制と住宅専用規定について

本件では、「シェアハウス」を禁止する規約改正をしていますが、そもそもこのように専有部分の用途を制限する規約を定めることは許されるのでしょうか。

区分所有法30条は、規約で定められる事項(規約事項)を定めています。

すなわち、区分所有者の団体(管理組合)は、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互の事項」について、規約で定めることができます。

「普理又は使用」に関する事項ですので、区分所有権の処分を禁止・制限すること(例えば、売却を禁止したり、制限すること)は、規約で定めることができません。

他方、専有部分の使用方法について定めることは建物の使用に関する事項ですから、規約で定めることができます。マンション標準管理規約では、専有部分の使用方法につき「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定しています(同規約単棟型12条。以下、「住宅専用規定Jといいます。)。

この趣旨について、標準管理規約コメント12条関係は、「住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。

したがって、利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する」と説明しています。

住宅専用規定を規約に定めているマンションでは、専ら営業用事務所や店舗として専有部分を使用することは当然禁止されます(税理士事務所としての使用禁止を認めた裁判例として東京高判平成23年11月24日判夕1375号215頁があります。)し、住宅と併設する形で事務所等を設ける場合であっても、生活の本拠であるために必要な平穏さを欠く場合には、住宅専用規定違反に当たると考えられます。

他方、住宅宿泊事業法に陥づく宿泊事業(いわゆる民泊)を専有部分で行う場合には、これがあくまでも「住宅」であることを前提とする宿泊事業であることから、住宅専用規定に違反するわけではないという考えが成り立ちます。そこで、平成29年8月、標準管理規約が改正され、民泊を禁止する規約のモデル条項も公表されました。

この時に、民泊を禁止したり、限定的に認めたり、あるいは認めた上で細則において民泊のルールを定めるなどの対応をしたマンションは多いかと思われます。なお、民泊禁止の規定を定めなくても民泊は住宅専用規定によって禁止されるとの見解もあります(折田泰宏ほか「マンションにおける民泊・シェアハウスの法的諸問題」マンション学55号(2016年) 66頁、伏見康司「民泊の概要と法的課題について」マンション学62号(2019年) 61頁) 。

していますが、そもそもこのように専有部分の用途を制限する規約を定めることは許されるのでしょうか。

区分所有法30条は、規約で定められる事項(規約事項)を定めています。

すなわち、区分所有者の団体(管理組合)は、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互の事項」について、規約で定めることができます。

「普理又は使用」に関する事項ですので、区分所有権の処分を禁止・制限すること(例えば、売却を禁止したり、制限すること)は、規約で定めることができません。

他方、専有部分の使用方法について定めることは建物の使用に関する事項ですから、規約で定めることができます。

マンション標準管理規約では、専有部分の使用方法につき「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定しています(同規約単棟型12条。以下、「住宅専用規定Jといいます。)。この趣旨について、標準管理規約コメント12条関係は、「住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。

したがって、利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する」と説明しています。

住宅専用規定を規約に定めているマンションでは、専ら営業用事務所や店舗として専有部分を使用することは当然禁止されます(税理士事務所としての使用禁止を認めた裁判例として東京高判平成23年11月24日判夕1375号215頁があります。)し、住宅と併設する形で事務所等を設ける場合であっても、生活の本拠であるために必要な平穏さを欠く場合には、住宅専用規定違反に当たると考えられます。

他方、住宅宿泊事業法に陥づく宿泊事業(いわゆる民泊)を専有部分で行う場合には、これがあくまでも「住宅」であることを前提とする宿泊事業であることから、住宅専用規定に違反するわけではないという考えが成り立ちます。そこで、平成29年8月、標準管理規約が改正され、民泊を禁止する規約のモデル条項も公表されました。

この時に、民泊を禁止したり、限定的に認めたり、あるいは認めた上で細則において民泊のルールを定めるなどの対応をしたマンションは多いかと思われます。

なお、民泊禁止の規定を定めなくても民泊は住宅専用規定によって禁止されるとの見解もあります(折田泰宏ほか「マンションにおける民泊・シェアハウスの法的諸問題」マンション学55号(2016年) 66頁、伏見康司「民泊の概要と法的課題について」マンション学62号(2019年) 61頁) 。

(2)「シェアハウス」について

シェアハウスは、一般的には、「本来1つの住宅を(いくつかに区切って)複数人に貸し出すこと」を想定した用語ですが、法律上明確な定義があるわけではありません。

国土交通省は、シェアハウスの運営管理に当たっての注意点をまとめた「シェアハウスガイドブク」を発表しており、この中でシェアハウスについて「1つの賃貸物件に親族ではない複数の者が共同で生活するもの」という説明をしていますが、これも法的な定義ではありません。

マンションにおいてシェアハウスを禁止する際には、単に「シェアハウス」と規定するだけだと、その規制の範囲が不明確になりますので、「シェアハウス」の定義を規定することが重要です。

本件は、「シェアハウス」の定義を規約で定めており、それが本件訴訟においても活かされており、実務上参考になります(前記〔別紙2〕を参考にしてください。)。

なお、シェアハウスについて、国土交通省は、安全面に問題のあるものを特に想定して「違法貸しハウス」と呼び、建築基準法上の問題を指摘していました(2013年9月6日国住指第4877号国土交通省住宅局建築指導課長通知、同日付「違法貸し)レーム対策に関する通知について」)が、2014年に建築基準法施工令が改正され、現在では、問仕切りなどを新たに設置しない限り、建築基準法に違反しないで専有部分をシェアハウスに供することは可能となっているので、本件のような問題が生じます。

(3)請求の特定方法

訴訟において、規約違反や区分所有法57条を根拠に違反行為の停止を請求する場合には、禁止される違反行為を特定する必要があります。

単に「シェアハウス」としての使用を禁止するとだけ規約に規定し、訴訟では、「被告は、本件専有部分を、シェアハウスに供してはならない」と請求し、その旨の判決を得た場合であっても、「シェアハウス」の意味が明確でないと、相手方から、ワンルームを2部屋に分け複数人で使う程度であればシェアハウスではないとか、区分所有者の親族1人と親族以外の複数人が部屋を区分して生活しているが1人は区分所有者の親族だからシェアハウスではない、などの反論がされ、果たして規約および判決に違反しているのかどうかが分からなくなってしまいます。

本件は、規約で明確化した「シェアハウス」の定義を活かして裁判上の請求をしており、訴訟における請求の特定の方法としても実務上参考になります(前記「主文」を参考にしてください。)。

(4) 管理規約の変更と「特別の影響」について

区分所有法31条1項は、管理規約の変更が、一部の区分所有者に特別の影響を及ぼすとき、その承諾を得なければならないと規定しています。

最高裁判所は、特別の影響を及ぼすときとは、規約変更の必要性および合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益を比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えていると認められるとき、と解釈しています(最判平成10年10月30日民集52巻7号1604頁) 。

専有部分の使用目的を制限する規約の変更が「特別の影響」に当たるかどうかの判断に当たっては、裁判所は、規約の変更により規制される行為の内容および性質、当該マンションにおける専有部分の従来の利用目的および利用形態、新たな規制により一部の区分所有者が受ける不利益の内容および程度といった事情を総合考慮していると説明されています(志田原信三ほか「マンションの管理に関する訴訟をめぐる諸問題(2)」ジュリ1385号(2013年) 31頁) 。

シェアハウスを禁止する規約改正の有効性が問題となった東京地決平成25年10月24日判例集未搭載は、シェアハウスを禁止する規約の必要性・合理性は否定できないとしながら、当該マンションの使用目的が住居だけでなく事務所も含まれていること、管理規約上、賃借人が管理規約や使用細則を遵守する旨の誓約書を提出するためそれにより入居者の氏名を特定できること、シェアハウスにおける最大居住人数が7名であり当該マンションの1世帯が使用する場合と比べて居住する者の数が若干増えるに過ぎないこと、シェアハウスを運営する区分所有者がシェアハウスのために規約改正前の段階で取得価格の約4分の1に当たる980万円の費用を用いて改修工事を行い完了させていること等を考慮して、規約改正により特別の影響があるとして、当該区分所有者の承諾を得ていないため、規約改正を無効と判断しました。

このように、シェアハウスを禁止する規約を設ける場合には、禁止によって不利益を受ける区分所有者にとって特別の影響を及ぼすとして、その承諾を得なければならないと判断される可能性があります。しかしながら、本件は、区分所有者の代理人が本件改正の議案に賛成したことから、区分所有法31条1項の「承諾」があると判断しました。

本件では、「承諾」があると判断されたため、シェアハウスのための準備行為などが本件改正よりも前に行われていたか否かという点を含め、「特別の影響」の有無については詳細な判断がされなかったものと思われます。

(5)区分所有法57条に基づく共同利益背反行為の差止め

シェアハウス禁止の規約を定めている場合で、専有部分をシェアハウスに供した場合には、規約違反に当たると考えられますので、規約違反であることを根拠にして、規約違反行為の停止を求めることができます。

また、本件のように区分所有法57条に基づいて、共同の利益に反する行為として違反行為の停止を求めることも可能です。

区分所有法57条に基づいて違反行為の差止めを求める場合には、単に規約違反であることを主張するのみでなく、区分所有法6条の「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」であるとの評価を導く
種々の事実を主張立証する必要があります。

規約違反の事実は、共同の利益に反することを基礎付ける極めて重要な根拠となります。

そして、規約違反であることに加えて、規約が定められた趣旨・目的、規約違反の態様・程度、規約違反行為によるマンション全体への影響、事前に勧告をしたかなど訴訟提起まで経緯等を考慮します。

本件では、規約が定められた趣旨・目的として、①本件マンションのセキュリティーを保全・確保すること、②犯罪などの不安要因・不確定要素を排除すること、③豊島区マンション管理推進条例で義務付けられている居住者名簿の作成を可能とすることが考慮され、規約違反の態様・程度として、ネパール人17名、中国人2名、フィリピン人2名を住まわせるシェアハウスであったことが考慮されて、共同の利益に反するとの認定がされていると考えられ
ます。判決文からは明確ではないですが、本件でも理事長が訴訟提起前に勧告をしていること、被告Ylが本件改正に賛成しながら規約違反行為をしたことも考慮され得る事情です。

実務上の指針

(1)「特別の影響」を検討した規約改正

上記のとおり、シェアハウスとしての用途を禁止するなど、専有部分の用途を制限する規約変更は、一部の区分所有者に「特別の影欝」があると判断される可能性があります。

したがって、その必要性・合理性、規制によって当該区分所有者が受ける不利益などについて検討した上で、規約変更を行う必要があります。

(2)先すは、理事長名での勧告

規約違反行為や共同の利益に反する行為の停止を求める場合には、まずは規約において、問題行為に対応する禁止規定があるかどうかをよく確認する必要があります。

そして、本件のように訴訟において違反行為の停止を求める場合には、訴訟の前に、理事長名で勧告を行っておいた方がよいと考えます(標準管理規約単棟型67条1項) 。勧告をすれば違反者が違反行為を止める場合がありますし、区分所有法57条に基づいて訴訟を提起する場合には、「勧告したけれども止めなかった」という事実が管理組合にとって有利な事情として働きます。

(3)訴訟に関する集会決議を行う

区分所有法57条を根拠にして違反行為の停止を求める場合には、集会の決議が必要です(区分所有法57条2項。普通決議。)。

また、原告を誰にするかについても注意が必要です。法人化していない管理組合では「区分所有者全員」、「指定された区分所有者」または「管理者」が原告になります(区分所有法57条1項、3項) 。

「管理組合」ではないので、注意が必要です。通常、「管理者」を原告としているケースが多いと思われます。

他方で、管理組合法人の場合には「管理組合法人」が原告になります(区分所有法57条1項) 。

なお、訴訟提起のための決議(区分所有法57条2項)とは別に、「指定された区分所有者」や「管理者」に原告としての権限(「訴訟追行権」といいます。)を与えるための決議も別途必要です(区分所有法57条3項) 。

もっとも、区分所有法57条に甚づき訴訟提起することと「指定された区分所有者」または「管理者」を原告とすることを、1つの議案の中に含めて決議しても問題ありません。

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